買い物依存症について精神科医が解説します。

本日の動画では「買い物依存症」についてお話ししています。

買い物依存症とは、繰り返し衝動的に買い物をしてしまい、その結果として日常生活に支障が出てくる状態を指します。

金銭的な破綻をきたすような買い物の繰り返しや、常に「何を買おうか」と考え続けてしまうことで、心身ともに疲弊していくケースが多く見られます。

買い物をすることで一時的に気晴らしになったり、気分が高揚した経験は誰にでもあると思います。これは脳内でドパミンという物質が分泌されているためで、この快感を脳が「報酬」として学習してしまうことが、依存の始まりです。
こうした仕組みにより、「またあの気持ちを味わいたい」という衝動が強まり、依存へとつながっていきます。

ただし、買い物依存症だけを理由に精神科を受診される方は多くはありません。うつ病やパーソナリティ障害、パニック症などの精神疾患と併発しているケースが非常に多いのが特徴です。

では、どうすればこの買い物依存症を改善していけるのか。治療の柱となるのは認知行動療法（CBT）です。

まずは「どんな時に衝動的に買い物してしまうのか」という引き金（トリガー）を探す作業から始めます。
たとえば「職場で怒られた後につい買ってしまう」「恋人と喧嘩をした後にネットで衝動買いしてしまう」など、具体的な場面をカウンセラーと一緒に整理していきます。

また、「これを買えば幸せになれる」というような誤った信念（認知）が見つかることも多く、それを修正していくことが大切です。
買い物直後は満足感を感じても、すぐに興味を失ってしまう――その繰り返しの中に「本当の幸せ」がないことに気づく必要があります。

衝動が高まった際には、それを別の行動に置き換える練習も行います。
たとえば散歩に出る、カラオケに行く、ゆっくりお風呂に浸かるなど、自分に合った方法を見つけていきます。

一方で、「薬は効くのか？」という点も気になるかもしれません。実は買い物依存症そのものに直接効く薬はほとんどありません。

過去に抗うつ薬フルボキサミン（デプロメール・ルボックス）を用いた研究もありますが、効果はごくわずかだったという結果にとどまっています。

しかし、他の精神疾患を併発している場合には薬物療法が効果的です。
たとえば双極性障害を合併している方には気分安定薬が、ADHDがある方にはアトモキセチン（ストラテラ）が有効だったという報告があります。
つまり、買い物依存症が他の病気と関係している場合は、その元になっている疾患の治療が改善の鍵になるのです。

買い物依存症は「癖」として形成されていくものですが、その背後には「これを買えば幸せになれる」といった思い込みが存在します。
こうした認知を見直し、自分の衝動に向き合っていくことで、少しずつ生活を取り戻すことができます。

「もしかして自分もそうかもしれない」と思った方は、一度精神科の外来を受診されることも選択肢の一つです。思わぬところに原因が潜んでいることもあります。

この動画が少しでも参考になれば嬉しく思います。
ご視聴いただきありがとうございました。明日も19時にお会いしましょう。

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動画の内容は精神科医である私の診療を通してえた感想です。あくまで私の感想ですので、参考にするかどうかは視聴者のみなさまで判断していただければと思います。個別の診断や治療に関するアドバイスは責任を持ったものは残念ながらできませんので、一般論としての私の意見しかできないことをわかっていただけるとありがたいです。この動画を通じて起こりえる損害に対しては対応したいですが、一般論と私の感想によるものですので、限界があることをご理解ください。

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