「おくりびと」2008年＿改訂版／１０年に一度の完璧な脚本／「シネマプロムナード 」 クラシック映画チャンネル

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現在、ウィキペディアには、納棺師とは、
「主に葬儀社からの依頼で火葬までの遺体の状態を管理しつつ、遺族や参列者等が故人と対面できる様に遺体の見栄えを整える。具体的には、ドライアイス等を使って腐敗の進行を抑えたり、表情を整え臭いを抑えたり、含み綿、経帷子等の衣装に着替えさせ、顔剃りや化粧をする。変死体の場合は死因に沿って遺族にショックを和らげるような処置をする」と説明されています。

「納棺夫日記」の序文で、作家の吉村昭氏は、
「人の死に絶えず接している人に詩心がうまれ、哲学が身につく。それは、真摯に物事を考える人の当然の成り行きだが、＜納棺夫日記＞には、それが鮮やかに具現されている。この作品の価値は、ここにある」
と記しています。
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２０２２年現在およそ８０％の人たちが亡くなるといわれる病院での、死後の処置についてご存知でしょうか。
小林照子氏の書かれた「死に逝くひとへの化粧」（2013太郎次郎社エディタス）によると、

１痰の吸引、チューブ類の除去
２傷や褥瘡などの手当て
３口や鼻、肛門などへの綿詰め
４全身清拭
５着替え
６薄化粧・整髪
７手をお腹の上に組ませ、顎を閉じ、四角い布を顔にかける

以上、かかる時間は３０分から１時間程度だそうです。

これを、看護士さん一人か二人で行います。ところが、これらの行為は病院にとっては「付け足し」みたいなもので、診療報酬にも含まれませんから、ともするとおざなりになりがちです。まして死化粧については、看護師さんはメーキャップの専門家ではありませんから、自前の化粧道具を使う場合も多いようです。

しかも、着物の襟を逆さ合わせにしたり、顎を無理に閉じたり手を組ませたり、綿詰めをしたりするのは多分に死者への畏れが根拠になっている因習によっている部分が多く、医学的な根拠はないといいます。

そんな状況もかかわらず、多くの弔問客は、わざわざ白い布をめくって亡くなった人の死に顔をみて、「安らかな顔だ」とか「眠っているようだ」とか、言います。個人の最後の顔はずっと記憶に残り続けます。闘病や死による変化を正し、少しでも元気な時の、本来の姿に近い死化粧を望むのは遺族にとって自然な感情でしょう。まして辛い闘病が続いていれば、ともに苦しいを味わってきた家族にとって、死に顔が安らかだと、それだけで一つの救いになります。

これら一連の問題に向き合うために「エンゼルメイク」は生まれました。

小林氏が始めたエンゼルメイクとは、

「医療行為による侵襲や病状によって失われた生前の面影を、可能な範囲で取り戻すための顔の捜索を整える作業や補正を含んだケアの一環としての心理現象である。またグリーフケアの意味合いもあわせもつ行為であり、最後の顔を大切なものと考えたうえで、その人らしい容貌、装いに整えるケア全般のことである。」

と定義されています。
死に逝く人にメイクを施すことで遺族も癒されていく。いってみれば生者と死者をつなぐもの、それがエンゼルメイクです。

本の中には、おじいちゃんのそばに全く近寄らなかった幼い女の子のお孫さんが、メイクを終えた後に、家族が「ほら昔のおじいちゃんと同じだよ」と促すと、恐る恐る近づき、顔を見るなり「あ、おじいちゃんだ」と笑顔になったというエピソードが紹介されています。

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