【GTA20XX】闇医者　甘衣かるあ視点　第15話　「アーマーのない翼」

23時前、甘衣かるあは眠気を引きずりながら目を覚ます。
無線が鳴る。

「朝イチで車の強盗してきた。怪我したから治してくれ。」
師匠の声は、いつもより少し疲れていた。
治療を済ませると、街に新しくできたミュージアムの話題を聞く。
SNS〈バーディ〉で見たそのニュースを思い出し、
二人で外観だけ見に行くことにした。
まだ中には入れず、柵越しの見物だけ。
夜風に吹かれながら、かるあは昨日のことを報告する。

「闇医者として動けてたのかな……間違ってなかったのか不安で。」

師匠は少し間をおいて答えた。

「大丈夫。」

呼び出し

レギオンで警察密着番組を眺めていたとき、
無線がまた鳴る。

「カジノ近くの建物に、誰にも見られず来て。」
いつもと違う声色。
かるあは「どうしたんだろう」と思いながら指定の場所へ向かった。

そこには師匠と、見知らぬ男がいた。
彼は麻薬の精製と売買を行う組織の一員だという。
最近の報道で警察が麻薬捜査を強化しており、
組織は闇医者への接触を視野に入れているとの話だった。

「何かあったら呼ぶ。その時は頼む。」

男はそう言い、3つの製作所の位置情報を渡した。
同時に口止め料も。
かるあは静かにうなずく。

「治療以外では動かない。誰にも言いません。」

その言葉に偽りはなかった。
一緒に出ると目立つため、かるあはひと足先にその場を離れた。

禁じられた依頼

レギオンに戻り、前日の反省を師匠と話しながら待機。
そこに一本の電話。
内容は明らかに“闇医者の範疇”を超えていた。

「警察ヘリがクラッチボスを追ってる。妨害してほしい。」

治療ではなく妨害依頼。
通常なら断る案件だが、事前契約としての報酬のため受けることにした。

警察ヘリを探し出し、アタックを開始。
何度もぶつけたが、ヘリはびくともしない。

「アーマー付きか……」
後に聞くと、強化装甲仕様だったらしい。

逆に警察ヘリから攻撃を受け、
かるあのヘリが損傷、煙を吹く。
メカニック屋上ヘリポートに緊急着陸し、
ダクトテープで応急修理。
再び上空へ戻り、再戦。
だが二度目の衝突で再び損傷、
今度は警察ヘリが追ってきた。

「……ここまでか。」

そう思った瞬間、
警察ヘリが突っ込んできて、建物に激突・爆発。
炎が空を染めた。
かるあはその隙に高速道路へ不時着し、再びテープで補修。
依頼人は無事逃走。
だが、師匠が警察に捕まったと連絡が入る。

追い風と残響

プリズンへ迎えに行き、師匠を出迎える。
その足でヘリを闇メカの白河さんに預け、
アーマー化を相談するが、

「構造的に無理だな。」
と告げられる。
次の修理の約束だけを残して帰路につく。

再びレギオンのモニターで警察番組を視聴。
銃声とサイレンの映像を、黙って見つめた。

そのあと、射撃訓練場でハンドガンの練習。
さらにヘリの操縦訓練も行い、
夜が白むころ、ようやくアジトへ戻る。

「アーマーなくても、まだ飛べる。」

小さく呟き、
コートを脱いだままベッドに倒れ込む。
疲労と静けさが、同時に押し寄せてきた。