ウクライナからの避難家族「夢はひとつ、戦争が終わること」軍事侵攻から１年　福山市で迎える２度目の春 (2023/02/24

ロシアがウクライナに軍事侵攻し１年が経過しました。広島県によりますと現在、２９世帯５１人が広島に避難しています。福山市に避難して来月で１か月を迎えるあるウクライナ人家族の今を取材しました。

今、旬を迎えているイチゴ、みんな口いっぱい頬張ります。
今月１１日、福山市の国際交流協会が企画した”いちご狩り”。避難しているウクライナ人同士でコミュニケーションを図ってもらおうというもので、これまでブドウ狩り、広島城見学などでも交流を深めてきました。今回は５つの家族合わせて１０人が参加しました。

（エヴァちゃん５歳）
Ｑ：エヴァちゃんこれ（イチゴ）！
「でっかすぎる！大きい」

（ウクライナ東部ハルキウ州から避難　エヴァちゃんの母アンナ・セメネンコさん）
「私は（去年）ウクライナでイチゴの苗を買いました。私は３つだけ買った。だからイチゴが自宅にあるかもしれない。（ウクライナに残っている）夫は食べるかもしれない」

避難生活の長期化、簡単な受け答えは日本語でできるようになりました。
出入国在留管理庁によりますと２月１５日時点で、２１８５人が日本で生活を送っています。

家族３人で参加したビクトリアさん。福山に来て間もなく１年を迎えます。

去年３月、ウクライナ南部オデーサの隣、ミコライウ州から母・タチアナさん、娘・ソフィアちゃんの３人で福山市に避難しました。
あれからもうすぐ１年、ハイハイしていたソフィアちゃんは歯も生え元気に走り回るようになりました。

（ウクライナミコライウ州から避難　ビクトリア・カトリッチさん２４歳）
「毎日（母と）一緒に日本語の勉強しています。（娘の）ソフィアは少し日本語分かります。美味しい、座ってなど（しゃべります）。（ソフィアは）日本語でカレー、カレー大好きです」

去年２月に始まったロシアによるウクライナへの軍事侵攻。今もなお各地で戦闘が続いていて大勢の市民が国外へ避難しています。
ビクトリアさんによりますとミコライウ州の自宅では電気・水道・ガスのライフラインはまだ復旧していません。
長期化する戦争の影響は深刻な食糧不足を招き、ＷＦＰ＝世界食糧計画の推計によりますとウクライナ国内の３世帯に１世帯が十分な食料を確保できていないということです。

ビクトリアさんたちは、市から生活費などの援助を受けながら市営住宅に住んでいます。
親身になって３人を支え続けているのが斉藤かおりさん。
自宅に招いて食事を振る舞ったり、福山市内のイベントに一緒にでかけたりと、３人が不安にならないよう日常生活をサポートしています。
斉藤さんの活動を知る友人達が生活費の寄付をしてくれたり、食料や日用品を送ってくれています。

（支援者・齊藤かおりさん）
「去年の年末に帰国したいと言っていたが帰れなかった。今年の春に帰りたいと言っていたけど帰れそうになくて。娘のソフィアちゃんがウクライナに帰った時に電気もない、食べ物もない、水もないところに帰ったら大変だから保育所に行ったら？と話を秋ころからしている」

この日の昼食はビクトリアさんが作ったパンとタチアナさんが作ったクレープ。家族で囲む楽しい食卓ですが、気にかかるのは父・アナトリーさんのことです。
医師である父・アナトリーさんは今もウクライナに残り、日夜、負傷者した兵士や市民の治療にあたっています。
近況を聞こうと電話を掛けますが…、繋がりません。

（ビクトリア・カトリッチさん）
「多分今、電気が使えなくてネットに繋がらないので電話ができない」

この日の夜、アナトリーさんと連絡はつきました。
連日続くロシア軍による空爆。アナトリーさんが明日も無事でいられる保障はなく、ビクトリアさんたちはただ無事を祈ることしかできないのです。

（母・タチアナさん５０歳）
「福山はとてもいい場所です。福山の人たちは、みんな私たち家族の生活を支えてくれています。私たちは皆さんにとても感謝しています。もとろんウクライナに帰りたい。福山での生活はいいけれど夫が１人で待っているので早く帰りたいです。ウクライナに帰る日までに戦争が終わってほしいです」

ウクライナの現状を知ってほしいという思いから、ビクトリアさんは齊藤さんと一緒に市内の学校を訪問したり、戦争の惨禍を伝えるイベントに参加したりしています。
室内には訪問した学校の生徒からプレゼントされた寄せ書きのメッセージなどが飾られていました。

Ｑ誰がこの漢字を書いた？
（ビクトリア・カトリッチさん）
「私。もう少し美しく書きたかったけど難しかった。私の夢は戦争が終わること。それがたった一つの夢」

福山に避難して来月で１年、この４月からソフィアちゃんは市内の保育園に通い、ビクトリアさんは日本語学校で勉強を始める予定です。
母・タチアナさんは夫・アナトリーさんの生活をサポートするため７月にウクライナへ戻る計画です。

（ビクトリア・カートリッチさん）
「この１年はとても早かった。（ゼレンスキー大統領のＧ７サミット参加は）とても大きなサプライズです。ウクライナでは多くの人が仕事がなく食糧も不足しています。スーパーは開いていますが、価格は高騰していて以前のように買えません。ゼレンスキー大統領はＧ７参加国に対しウクライナへの援助などをお願いしてほしいです」
Ｑ：あなたの夢は何ですか？
「平和。それが私の一つの夢です」

遠い異国の地で迎える二度目の春。
家族は１日も早い戦争終結を願っています。 ＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
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