「もう弾がない」――しかし一人の砲兵将校の照準で、最後の砲弾が戦車隊を止めた
Автор: 鋼の時代
Загружено: 2025-12-29
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一九四五年一月二十三日。ルソン島サン・マヌエル、二七三高地。
中川正雄中尉は九一式野砲の砲尾の陰に身を沈め、木箱に積まれた残りの砲弾を数えた。十二発。谷底を遡ってくる米軍の装甲縦隊全体を止めるために、使えるのは十二発だけ。ドイツ製の双眼鏡でのぞくと、シャーマン戦車が二十三両。水田一帯に広がり、鋼鉄の星座のように、容赦なく彼の陣地へ向かって進んでくる。計算は単純で、そして恐ろしい。砲は一門。砲員は六名。砲弾十二発。敵戦車二十三両。肌寒い朝だというのに、中川は目ににじむ汗を拭った。二年前に熊本を発って以来ともに訓練を積んできた部下たちが、疲労と絶対の信頼が入り混じった顔つきで彼を見守っていた。彼らは昨日の夜明けから撃ち続けている。砲座は無煙火薬と焼けた油の臭いでむせ返っていた。空薬莢が陣地じゅうに散らばり、もはや手元にない弾薬の真鍮の記念碑のようだった。谷底を進んでくるアメリカ兵が知るよしもなかったのは、彼らが帝国陸軍でも指折りの砲兵将校の陣地へ近づいているという事実だ。千葉の砲兵学校を首席で卒業した男。多くの者が紙の上で計算するより速く、頭の中だけで射撃諸元を弾き出す砲手。そしてこの朝、米軍の装甲部隊が三千メートルに迫る中で、中川は、技量が弾数に勝ることを証明しなければならなかった。
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