活火山の麓に暮らす島里／海界 トカラ列島 諏訪之瀬島（鹿児島県）

An island village living at the foot of an active volcano /Walk around the island village, Suwanosejima, Tokara Islands (Kagoshima Prefecture)

十島村の中で2番目に大きい。島の中央には標高796mの御岳（おたけ）があり、今なお噴煙をあげる活火山の島である。「日本書紀』の白雉5年（654）に「吐火羅（とから）国の男二人、女二人。合衛の女一人、風にあいて日向に流れ来たり」とある舎衛は諏訪之瀬島ではないかとの説がある。十島村の中でもっとも激しい活火山を抱くこの島は、過去何回となく大噴火を起こした。文化10年（1813）の噴火規模は大きく、東村と西村の50余戸あった人家は潰滅し、200余人の人々は悪石島・中之島へ移住した。中之島では在番が一部の人々を平島や臥蛇島・口之島に移し、ただ1人の死者も出さなかった。「拾島状況録』によると明治28年当時、旧墓地跡に埋没を免れた墓石が若干数あり、その1つには安永6年（1777）の年代と肥後市郎右衛門の名があったという。おそらく郡司墓であろうが、諏訪之瀬島も他の島と同様に肥後氏の勢力が強かった。
諏訪之瀬島の本格的な開拓は明治期に入ってからで、奄美大島の藤井富伝らが明治9年7月の踏査を経て、同16年4月に27人の有志を得て入植したことに始まる。翌17年10月の大噴火被災など幾多の苦難を経て同28年には居住世帯は36戸に増えた。島の主神は八幡神で明治の入植後八幡神社が再興された。主峰の御岳のほかに村落近くの根神山などの旧名称が残っており、沖縄・奄美の影響を受けた信仰がしのばれる。現在の住民は奄美大島からの移住者の子孫と、安住の地を求めて移住してきた県外出身者で構成される。昭和40年代の移住者は一時ヒッピー（他の住民からはバンヤンとも）といわれたことがあるが、現在はこうした新しい住民などが中心となったユニークな島づくりが進められていている。北西部の溶岩台地には手つかずのマルバサツキが自生し、春になれば一面赤とピンクの花畑と化す。また、ハチジョウススキも群生しており、これらは特定植物群落に選定されている。平成27年4月1日に定期船の順路変更が行われ、鹿児島から3番目の寄港地となった。翌28年、子育て支援施設「すわっこ園」が開所、諏訪之瀬島小中学校が分校から本校になるなど、子育て世代の移住もみられる。平成30年には簡易郵便局が開局した。島ではトビウオ漁などが営まれている。（「シマダス」参照）

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