【失敗は宝 】玄侑宗久の色眼鏡(2月16日放送)
Автор: 福島ニュース [福テレ]
Загружено: 2022-03-01
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大学入学共通テストの日にとんでもない大トラが出現しまして、東大の弥生キャンパスですね。彼はそこに行く前に既に火炎瓶を7、8本投げていて、キャンパスでは包丁で72歳のおじいさんを後ろから刺して。試験会場に急いでいた千葉県の男子生徒と女子生徒をやっぱり包丁で襲ったんですね。いろいろ読んだりしてみると、東大の理三ですか、医学部を目指していて、高校2年生なんですが、1年時は割と成績良かったものの、それが思うように伸びなくて絶望的な気分になっていて、あの犯行に及んだというんですけど。
なんか本当に今年を象徴するトラのような恐ろしい事件だと思ったんですね。関係ない人を巻き込むという意味では大阪の心療内科と同じようなやり方だと思うんですが、まだ学生ですからなんとか考え方を持ち直して欲しいと思います。
私らも受験生の頃そうでしたけど、思い込まされるんですよね。とにかく学力トップになりたい。その学力トップというのは東大理三なんだと。勝負って必ず負ける訳ですから、負けた時の頭の切り替えようというか、頭がいいならば、そっちも考えておいて欲しいですよね。頭がいいということは多様な価値観が理解できるということでしょう。
私自身のことで恐縮ですけど、私は物を書きたいという気持ちもあり、坊さんにも興味ありという非常に中途半端な状態で受験を迎えたんですね。そうすると、物を書くのにも坊さんになるのにも、受験に失敗した方がいいかもという気持ちがどこかにあったんですね。だって失敗してる人間が成功した人間の思いを想像するのはまあ出来ると思うんですよ。でもスイスイ成功して行っちゃうと、失敗した人間の思いは想像できないし、宗教にも文学にも肥やしにならないだろうと、そういう思いがあったんです。負け惜しみに聞こえるかもしれませんけども、落ちるのも悪くないなという気持ちはどこかにありましたね。落ちた時、そりゃがっかりもしたし驚きもしたんですけど、でも予備校生活もおもしろかったですよね。そういうなんていうのかな、いい加減なというかフレキシブルなところが欲しいんじゃないですかね。精神医学では「レジリエンス」と言うんですけれども、打たれ強さというかつぶれないしぶとさ。そういうものを持ってほしいなと思いますね。
歴史を振り返ってみると、大勢の人の中から誰かを選択するというやりかたは初めは家柄だった訳ですよね。家柄ってほんとに固定しちゃいますから、それはいけないでしょう、一種の差別でしょうということになって、中国で科挙というのが生まれる訳ですね。これが初めての学科試験ですよ。学科試験さえ好成績であればどんな家の生まれであろうとも合格と。非常に素晴らしい制度として登場してきた訳ですよ。学科試験というものに変わる選択の仕方も、いずれ生まれるんじゃないかという見方をする人もいた訳ですが、今のところまだ生まれてないですね。そうすると、学科試験が良い人の中にもある程度の生まれながらの優位さというものが生じているんじゃないか、という意味では家柄と合わさって来たんじゃないか、という見方もありますが、どうも解決策は見当たりません。
いずれにしても、その人を大勢の中から選ぶに当たって、学科試験は仮の物差しですよね。その仮の物差しにこちらも乗っかって試験を受けてあげる訳ですよ。本当は私の価値はそんなことで分かるものではない幅広いもんなのだと思いながらも、そういう物差しで測るというんであればまぁそこに乗っかりましょう、と言って仮に受けてる訳ですね。その仮にというのを忘れてしまうと、自分の価値が全部それしかないかのごとく思い込んでしまうわけで、今回のこともそういうことがあるなと思っているんです。
禅の言葉でいい言葉を紹介したいと思います。中国の蘇軾(蘇東坡)という方の言葉なんですけども、「柳は緑 花は紅 真面目」というんですね。前半部の「柳は緑 花は紅」とだけ言うこともありますけども。要は柳は新芽の緑が美しくて素晴らしい、桃の花は真っ赤な無垢な色合いが素晴らしいと言ってるんですけども、柳の緑と桃の赤い花ってのは比較しようがないんです。比較しようがない中で共にそれぞれ素晴らしいと。世の中本当はそうじゃないですか。そのなかでいやウチはちょっと花は要らないからいい柳を選ぼうとしてるんだという場合、花が悔しがってもしょうがない。そんな競争に乗らなきゃいい訳で。
だからお医者さんになりたいというのは立派な夢だし、素晴らしいですが、本当に自分が適しているのか、あるいは自分が生きていくに値するその生きがいたりえるのかということは、これからの縁で決まることでしょう。お医者さんじゃない色んな可能性が開けていくかもしれないし、16、7歳でそんなに強く思い込む必要はないんですよ。
コロナ禍で受験という、これは本当に過酷ですよね。大変だなと思いますけど、彼はまだ受験生じゃない訳ですよね。まだもうちょっと考え直して欲しいと思います。そういういい頭を持ってるんだと思うし、多様な価値があるということを気付いて欲しいと思います。
#玄侑宗久 #色眼鏡 #失敗は宝
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