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「現実的な体験が出発点」作家・小川洋子さんが語る創作活動の舞台裏(1)【岡山】 (23/07/18

Автор: OHK公式チャンネル

Загружено: 2023-07-18

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今、旬な人に直接会って話を伺う「ライブトーク」。今回は岡山市出身の作家小川洋子さんです。2023年、芸術の分野で優れた業績をあげた人たちに贈られる日本芸術院賞を授賞しました。原点となった故郷での日々や目指す作品像について伺いました。

(中塚美緒アナウンサー)「このたび日本芸術院賞を受賞されて率直にお気持ちは?」
(小川洋子さん)「全く予想外の出来事で、いまだにどう受け止めていいかよく分かっていない状況」

7月3日、天皇・皇后両陛下ご出席のもと行われた日本芸術院賞の授賞式。授賞した9人の中に、小川さんの姿がありました。

(中塚美緒アナウンサー)「作家デビューして35年」
(小川洋子さん)「幸運だった、幸せだったの一言に尽きる。学生の頃図書室で一人で本を読んでる時、この中に自分の書いた本が1冊でもいいから収蔵されるようになったらどんなにいいだろうかと夢見ていた。その夢がかなって感謝しかない」

26歳の時、「揚羽蝶が壊れる時」でデビューして以降、1991年に「妊娠カレンダー」で芥川賞、2004年には「博士の愛した数式」で初代本屋大賞を受賞するなど、華々しく活躍してきた小川さん。作家活動の原点は出身地の岡山にありました。

(中塚美緒アナウンサー)「高校時代まで(岡山で)過ごしていた」
(小川洋子さん)「そうです。旭川のほとりとか土手とか。あまり友達がいない高校生活だったので、一人で大原美術館に休みの日に来たりして。でも絵を鑑賞するというより、一人になって無言で、絵の中に描かれた人物や画家たちや彫刻家たちと言葉にならない会話を交わしていた」

高校時代の思い出の地、大原美術館で2年に1回開催される朗読会。展示されている名画などをテーマに、短編文を募集し、アナウンサーが朗読するもので、小川さんは朗読作品の選考に携わっています。選考基準を聞いてみると…

(小川洋子さん)「きれいにまとまっている必要はなくて、でも『この一行が光って見える』という錯覚を起こしてくれるものを選ぶようにしている」

【小川さん自身のテーマ作りのきっかけは?】

(中塚美緒アナウンサー)「物語を構想する時、きっかけになることは?」
(小川洋子さん)「たいてい現実的な体験が出発点になる。ふとつけたテレビで誰かがしゃべっていたとか、電車の中で小耳にはさんだ誰かの雑談とか、ホテルのロビーで見かけた名も知らぬ老人の姿とか。これは絶対小説になると確信が持てた時が一番うれしい。取材したり資料を調べたりしている間は楽しいが、いざ書きはじめるとしんどい。パソコンのスイッチを入れる時の気の重さ…でもどんな仕事でもそうだと思う」

(中塚美緒アナウンサー)「今日は書けないかもしれないという日も?」
(小川洋子さん)「あるが、そういう時に書かないでいると、どんどん書けなくなる。書けないという日に限って、無理やり体を椅子に縛り付けるようにして座って、一行でもいいから書くと、パッと風景が開けて、次の一行が書ける、次の一行が書けるとなる」

(中塚美緒アナウンサー)「無理にでも体を向けて書いて、パッと開ける一文が書けた時もあれば、次の日に見た時に『もう少しこうした方が』というものも?」
(小川洋子さん)「もちろんある。きのう5枚書けたが、きょう5枚削ることもしょっちゅうある。いつも常に、『きょうはあそこの場面書こう。楽しみだ』と言ってワーッと書けたという日は1日たりとも無い」

【人生の転機】

(中塚美緒アナウンサー)「こちらの“導きの箱”に写真を一枚お借りしました。こちらのお写真は?」
(小川洋子さん)「(オランダの)アムステルダムにあるアンネ・フランクハウス。アンネ・フランクが隠れ家に隠れていた時の隠れ家をカモフラージュするための本棚の前で撮った写真」

第2次世界大戦中、ユダヤ人の少女アンネ・フランクが、ナチスによる迫害を恐れて隠れ家生活を送りながらも、夢や悩みを書き記した「アンネの日記」。30代前半の時、仕事でアンネの家を訪れたことが、小川さんの転機となりました。

(小川洋子さん)「アンネの日記は古い本だと思われているかもしれないが、まだ私の母親世代の時代の話。ホロコーストの時代、残酷な時代が決して手の届かない遠くではなく、実は手の届くすぐそばにあることを実感した。それでもアンネは日記の中に、『私の希望は死んでからもなお生き続けること』と書き残したように、文学には生き残る力がある。文学を信じる力を与えてくれたきっかけでもあった」

文学の力を信じ、その世界の第一線で活躍する小川さん。その名は、今や世界に広まっていますが、目指す小説の在り方は…

(小川洋子さん)「小説の文章は難しくて、『こんなに自分はきれいな文章が書けるんだ』と作家が見せつけるような文章は、私は美しくないと思う。例えば大ヒットした曲でも、誰が作曲したとか、誰が歌ったかは、長い年月の中で忘れ去られて、作品の素晴らしさだけが残る。自分の小説も、『あの小説誰が書いたんだっけ?』と名前を忘れてもらえるくらい、長く深く読んでもらえれば本望」

「現実的な体験が出発点」作家・小川洋子さんが語る創作活動の舞台裏(1)【岡山】 (23/07/18

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