リニューアル記念名品展Ⅰ 帰ってきた泉屋博古館 いにしえの至宝たち　泉屋博古館

【見るアート噺】（取材・制作・レポート　DJAIKO62）
リニューアル記念名品展Ⅰ 帰ってきた泉屋博古館 いにしえの至宝たち
2025年4月26日〜6月8日
泉屋博古館（京都東山・鹿ヶ谷）

ポッドキャスト、ウェブマガジン、そしてショート動画で美術展紹介をしているアート噺、見るアート噺、今回は泉屋博古館へ。2025年6月8日まで開催中、リニューアル記念名品展Ⅰ 帰ってきた泉屋博古館 いにしえの至宝たちの見どころなど、短めの動画としてまとめました。是非ご覧ください。
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約1年の改修工事を経て、泉屋博古館が再始動。リニューアル記念名品展Ⅰでは、住友家ゆかりの品々を中心に、紀元前から19世紀にいたる日本とアジア諸地域の美術工芸の優品が、新たな装いのもとに披露されます。ロビーには、お釈迦様の舎利容器として伝わる中国・唐時代の《舎利容器石函》が登場。重厚な存在感と細密な彫刻が印象的で、「良き技術の箱、文化の箱、そして、皆様の過ごすその良箱としてありたい」という、館の再出発に込めた想いがこの《舎利容器石函》に象徴されています。

展示は、お正月だけの演目「翁」の能面《白色尉》と、白色翁の装束《白地蜀江模様袷狩衣》から始まります。縁起の良い幕開けに続き、絵画、書跡、茶道具や文房具、仏教美術まで、ジャンルも時代も多岐にわたる品々が並びます。章立てのない展示構成の中で、それぞれの作品が住友家の美意識やおもてなしの心を映し出しており、来場者は自らの視点で自由に作品と向き合うことができます。

展示室を巡る中で出会う名品の数々も見逃せません。たとえば、世界に160点ほどしか現存しない高麗仏画のひとつ《水月観音像》（重要文化財）は、制作年と作者が明記された希少な仏画で、その慈悲深い眼差しと繊細な彩色に心が静まります。また、伊藤若冲の《海棠目白図》では、枝にひしめき合う目白たちの姿が、ユーモアと愛らしさにあふれ、思わず見入ってしまう魅力を放ちます。代表作《動植綵絵》と同サイズ・同時期に描かれたとされており、そのため「こちらが《動植綵絵》の一部として国宝に指定されていた可能性もあるのでは、と思わせるほど」と学芸員の実方さんは語っています。

さらに、国宝《毘沙門天立像》をはじめ、八大山人の《安晩帖》、《是害房絵巻》など、見ごたえある作品がさりげなく並ぶのも本展の特徴です。名品でありながら構えた雰囲気を感じさせず、ふと足を止めた先に思いがけない逸品と出会えるのも魅力のひとつです。

住友家の別邸跡に位置する静かな空間で、美術と自然が響き合う時間を。いにしえから名高い逸品だけでなく、時代とともに新たな価値が見出された作品、今後注目を集めるであろう魅力的な作品までが一堂に会する本展。見どころをすべて挙げることは難しいほど、館が長年にわたり大切に継承してきた優品が集っています。中庭からは五山送り火で知られる大文字山の姿も望め、まるで住友家の邸宅に招かれたかのような、贅沢なひとときを味わうことができます。ぜひ、心静かに過ごす一日を求めて、お出かけになってはいかがでしょうか。

同じく約半世紀ぶりにリニューアルされた泉屋博古館のシンボル、ブロンズギャラリー（青銅器館）では、昭和のモダン建築の魅力を残しつつ展示ケースや内装を一新。1970年の大阪万博開催年に完成した空間で、青銅器の造形美を多角的に紹介する展示が整えられています。古代の造形と現代建築が響き合う空間で、もうひとつの泉屋博古館の魅力を味わうことができます。

※記者内覧会に参加しました。

【開催情報】
リニューアル記念名品展Ⅰ 帰ってきた泉屋博古館 いにしえの至宝たち
2025年4月26日〜6月8日
泉屋博古館（京都東山・鹿ヶ谷）
https://sen-oku.or.jp/kyoto/

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