【“魚が住めない”は昔】大阪湾に幻の高級魚･･･約200種類の「お魚天国」に　改善させたのは”空港建設”!?

大阪の空の玄関口、関西国際空港の沖合。そこで行われていたのは！
　（記者リポート）「カゴの中に魚が、見ただけでも数種類入っていますね」。
　高級魚「キジハタ」がこんなに！！でも漁をしているのではありません。空港の周辺に住んでいる魚たちの調査なのです。実はこの海の中が、お魚たちの楽園になっているんです。ためしに、海の中をのぞいてみると、ウマヅラハギ、アイゴ、スズメダイの群れ！これまでに確認されている魚介類は約２００種類にのぼります。
　戦後、大阪湾は産業発展のために埋め立てが進められ、魚が住める環境ではなくなっていました。そんな中、水質改善のきっかけとなったのが、２８年前に開港した関西空港でした。環境にやさしい空港をつくろうと、建設段階からある工夫が。
　（関西エアポート久保治之さん）「開港当初から『緩傾斜石積護岸』といいまして、海藻が繁殖していて、いい漁場になっていることが確認されています」。
　海中に傾斜の緩やかな護岸を作ることで、日光を当たりやすくし、さらに魚のエサとなる数十種類の藻を植えて、“藻場”をつくったのです。空港周辺は禁漁区域に指定されているため、魚たちにとって、安心して卵を産み育てることのできるすみかとなりました。開港翌年の取材映像には、たくさんの魚の姿が！
　（リポート）「非常にたくさんのスズメダイが群れを作っています。まるでスズメダイに包囲されたような、そんな感じがします」。
　その魚を追いかけて、イルカの１種であるスナメリの群れが確認されたことも。
　（リポート）「スナメリの大群です、画面上２０頭はいますね」。
　スナメリが戻ってくるほど綺麗になった海。３０年近くが経った今でも、その環境は維持されています。
　（関西エアポート・武内有佳さん）「もともと泥地で藻がなくて、魚も住んでいなかったようなところだったんですけれども、魚が育つ環境がこの藻をきっかけにできてきて、これだけ多種多様な魚が生息している状況が今ある。それが、この藻などの貢献であると思っています」。
　関空周辺の藻場の割合は、大阪湾全体の約２割を占めていて、水質の改善に大きく貢献してきました。では一体、どれほどの魚が定着しているのか。空港を運営する関西エアポートが、１２年前から魚の調査を始めました。
　１週間ほど海中に設置していた大きなカゴを引き上げ、中に入っている魚の種類を調べます。タコ、メバル、イシダイなどが姿を見せ、この日の調査で確認されたのは１０種類。このうち約９割はなんとキジハタでした！キジハタは「あこう」とも呼ばれていて、大阪では「冬のフグ、夏のアコウ」と言われる高級魚です。しかし、９０年代には「幻の魚」と呼ばれるほど少なくなっていました。そこで大阪府が独自の「ブランド魚」として増やそうと、毎年秋、熱心に大阪湾に稚魚の放流を続けているんです。魚たちのために、工夫を重ねてきた関空。今後もよりよい環境づくりに力を尽くします。
　（武内さん）「最初に（藻場を）つくって終わりではなくて、定期的にモニタリングをして、新たにもう１度種を植えるであったりとか、新たに藻場を創出するというような取り組みを、繰り返しやってきているというようなところです」。