NTTに総務省介入、9割が知らない株価下落の理由

NTT株に関する要約：株価低迷の要因と国策に支えられた3つの成長戦略
NTT株が短期的に伸び悩んでいる背景には、競争激化による一時的なコスト増大がありますが、その裏側では、NTTは従来の「電話会社」から脱却し、**「世界のインフラ・技術プラットフォーム企業」**へと変貌するための巨大な国策的成長戦略を急速に進めています。
1. 短期的な株価低迷に見える理由と現状の財務状況
NTTの2025年4月〜9月期の連結純利益は前年同期比7%増の5956億円でした。これは主に、子会社NTTデータグループが不動産投資信託（REIT）へデータセンター（DC）を売却したことによる1295億円の譲渡益によって吸収されました。
しかし、市場予想平均（QUICKコンセンサス）は下回っています。減益要因となったのは総合ICT事業（786億円の減益要因）販売促進の強化や、通信品質を高めるための基地局増設など、携帯電話関連の投資を手厚くしているためです。NTTの島田社長は、国内市場でのシェアを増やすため、コストをかけてでも体制強化が必要な「正念場」であると強調しています。
2. NTTの長期成長を支える3大戦略（なぜ「買い時」か）
NTTが現在仕込んでいる事業は、通信事業の収益性（ARPU）の限界を超え、非通信分野の収益（非通信ARPU）の本格的な成長と**LTV（顧客生涯価値）**の最大化を狙うものです。
① 金融経済圏の「最後のピース」完成 NTTドコモは、通信大手で唯一傘下に銀行がないという遅れを解消するため、2025年5月に買収を発表し、10月1日付で住信SBIネット銀行を連結子会社化する予定です。
• d NEOBANKの開始: これに伴い、住信SBIネット銀行は新サービスブランド**「d NEOBANK」**を開始します。
• フルラインナップの構築: ドコモは既にマネックス証券やオリックス・クレジットを子会社化しており、今回の銀行買収により、決済（d払い）、証券、融資、銀行を一体的に提供する体制が整います。
• 「日本版SoFi」の可能性: この戦略は、米国のフィンテック企業SoFi（ローン、投資、決済などを単一アプリで提供）に類似しており、ドコモが**「金融を基盤とする生活サービス企業」**へと転換する戦略的なマイルストーンと評価されています。
② 自動運転事業への本格参入とDXプラットフォームの構築 NTTグループは、自動運転事業の社会実装を推進するため、「NTTモビリティ」12月に新設すると発表しました。
• サービス展開: 新会社は、2027年度までに遠隔監視システムやインフラ協調システムなど、NTTグループの強みを活かした自動運転サービスを展開することを目指します。
• 技術的な焦点: 地域公共交通のドライバー不足に対応するため、**遠隔監視型の自動運転レベル4（条件付き完全自動運転）**に取り組む計画です。
• テクノロジーロードマップ: NTTドコモビジネスは、企業や地域が持続的に成長できる**「産業・地域DXのプラットフォーマー」を目指し、「AI/ロボティクス」「IoT/データ/デジタルツイン」など7つの技術領域を推進する「テクノロジーロードマップ2025」を公開しています。これには、AIによるシステム自律的な運用を目指す仮想化技術（Cognitive Foundation®）**も含まれます。
③ 国策「IOWN構想」と国産AIによる技術立国 NTTの最大の成長エンジンは、次世代通信インフラであるIOWN（Innovative Optical and Wireless Network）構想です。
• IOWNの革新性: IOWNは、通信速度を最大125倍、電力効率を100分の1に削減することを目指す光技術に基づいています。
• 社会貢献: IOWN技術が提供する超高速・低遅延通信は、自動運転支援や遠隔手術といった高度なサービスを可能にし、**「持続的な資源循環の未来」**を支えるとして、NTTドコモビジネスのロードマップにも組み込まれています。
• 国産AI「つづみ」: 米中AIに対抗するため、NTTは生成AI**「つづみ」を開発しています。これは、巨大さよりも小型軽量化と日本語特化に特化し、著作権に配慮した「クリーンなAI」として、コンプライアンスを重視する日本企業や官公庁向けのソブリンAI**としての地位確立を目指しています。
3. リスク管理と長期投資の極意
NTT株が懸念されるNTT法廃止による外国企業への買収リスクについては、外為法（外国人投資家の1%以上の取得に事前審査が必要）、経済安全保障推進法（重要インフラの支配拒否）、電気通信事業法（総務大臣による事業許可の絶対的必要性）の三重の法的防御によって、そのリスクは極めて低いと解説されています。NTT法廃止は、むしろNTTが海外展開の自由度を上げ、IOWNの国際交渉をスムーズにするための**「攻めの戦略」**であると見られています。
長期投資の極意としては、資産250億円を築いた個人投資家が、**「ノイズを気にしない覚悟」と「耐えること」**が必要だと指摘しています。NTT株はIOWNという長期プロジェクト（2030年代の実用化目標）に投資するものであり、短期的な変動に一喜一憂せず、長期目線で資産を育てる姿勢が重要です。