平成２９年度 春期 応用情報技術者試験 午後問４過去問題解説

今回の動画では、平成29年度春期 応用情報技術者試験 午後問4「システムアーキテクチャ」の過去問題を題材に、老朽化した物理サーバ群を仮想化基盤へ統合していく事例を通じて、仮想化技術の基本用語からリソース計算、可用性設計、性能劣化防止のための工夫までを一気通貫で解説します。この問題は、N会計事務所という中小規模の組織が、既存のオンプレミス環境を整理しつつ仮想化基盤を導入するという、近年のシステム更改現場でよく見られるシナリオをベースにしており、単なる用語暗記ではなく、「なぜその機能が必要なのか」「どのような前提でリソース計算を行うのか」「障害時に業務を止めないためにどのような構成を選択すべきか」といった、システムアーキテクト的な思考が求められる良問です。出題趣旨としては、仮想化やサーバ統合といった技術を単独のキーワードではなく、リソース効率化と可用性向上の文脈の中で正しく位置づけられているか、さらに、それを前提にした数値計算や構成選択を一貫したロジックで説明できるかどうかを測ることにあります。採点講評でも、用語レベルでの知識不足よりも、問題文に記載された条件を読み落として誤った前提で計算を進めてしまうケースや、障害時の挙動と平常時の負荷分散を同時に満たす配置を言語化できていない答案が多かったと指摘されており、午後問題らしい「文章読解と計算の両立」が合否を分けるポイントとなりました。

動画の前半では、まず「ライブマイグレーション」「シンプロビジョニング」「自動再起動（オートスケール）」といった仮想化システム特有の機能について、問題文に登場する事例をベースに整理していきます。ライブマイグレーションは、稼働中の仮想サーバを停止することなく別の物理サーバへ移動させることで、無停止メンテナンスや計画的な負荷分散を実現するための重要な機能です。シンプロビジョニングは、論理的な割り当て容量と物理的な実容量を切り離し、実際に利用された分だけ物理ディスクを消費することで、ディスクの利用効率を高める技術であり、「見かけ上は物理容量を超えた割り当ても可能だが、その分監視と運用設計が重要になる」という点が理解のポイントになります。自動再起動機能は、物理サーバ障害時に停止した仮想サーバを生き残っている他の物理サーバ上で自動的に再起動させることで、サービス停止時間を最小化するための仕組みであり、本問では特に「どの仮想サーバがどの物理サーバに移るのか」「そのときCPUやメモリの使用率がどの程度まで上昇するのか」といった挙動を正しくイメージできるかが重要です。単語を覚えるだけではなく、それぞれの機能がN会計事務所の業務要件である「会計システムを止めない」「夜間バッチと日中業務の両方に耐えられるリソース設計を行う」といったニーズとどう結びついているのかを読み解くことで、出題者の意図が見えてきます。

続いて、多くの受験者がつまずきやすいCPU・メモリ使用率の計算に焦点を当てます。本問の難所は、物理サーバのCPUおよびメモリ資源のうち「50%を仮想化基盤のオーバーヘッドとして差し引き、残りだけをリソースプールとして扱う」という条件が明示されている点です。この条件を読み飛ばすと、全体資源をそのまま各仮想サーバで分け合う前提で計算してしまい、使用率a, b, cを誤って算出してしまいます。動画では、まず「物理サーバ1台あたりのCPU・メモリ容量」「サーバ3台ぶんの総量」「50%を引いたあとのプール容量」という順序で丁寧に数値を整理し、その上で各システムが必要とするCPU・メモリ量を合計し、最終的にどの程度の使用率になるのかを、式レベルで追いながら解説します。同時に、なぜオーバーヘッドを考慮する必要があるのか、ハイパーバイザや管理ツール自体が資源を消費する現実的な前提を押さえることで、単なる暗算ではなく実務的な感覚を伴った理解へとつなげていきます。採点講評でも、「50%を差し引く条件を適用せずに計算した答案が多数見られた」とされており、問題文の条件を一つひとつ丁寧に確認する読解力が得点差の大きな要因になったことが示されています。

さらに、物理サーバ3台に対して複数の仮想サーバ（会計システム、本支店連携システム、資産査定システムなど）をどのように割り付けるかという設問では、「平常時の負荷の平準化」と「障害時の冗長性」を同時に満たす配置ロジックが問われます。ここでは、単に使用率の合計が100%を超えないように割り当てればよいのではなく、1台の物理サーバが故障したときに残る2台に仮想サーバが再配置されても、重要システムの性能が許容範囲内に収まるかどうかを考える必要があります。特に会計システムのような業務クリティカルなシステムは、負荷が高い時間帯でもレスポンスの悪化を最小限に抑える必要があるため、どの物理サーバにどの仮想サーバを組み合わせるか、またその組合せの理由を論理的に説明することが求められます。本問では、アクティブ／アクティブ的に複数の物理サーバに負荷を持たせつつ、いずれかのサーバが停止しても残りのサーバに自動再起動させて業務継続を図る構成が示されており、これを問題文の図表と合わせて読み解くことで、冗長化設計や配置設計の考え方を実務レベルで学ぶことができます。

加えて、障害時の性能低下を最小限に抑えるための「リソースの下限値（予約）」設定も、本問の重要な論点です。自動再起動機能により、物理サーバ障害時には停止した仮想サーバが別の物理サーバへ自動的に移動しますが、その際にすべての仮想サーバが元と同じ性能で動作できるとは限りません。物理資源が不足していれば、CPUやメモリの割り当てが絞られ、全体として性能劣化が発生します。そのような状況でも、会計システムだけは処理性能を維持したい、という要件を満たすために用いるのがリソース予約の仕組みです。あらかじめ会計システムに対して一定量のCPUやメモリを「下限値」として予約し、その分だけは他の仮想サーバが利用できないようにすることで、障害発生時でも会計システムの性能だけは守るという設計が可能になります。設問では、この下限値設定がどのように機能し、どの観点から重要なのかを説明させることで、単なる機能の名前ではなく、業務要件とインフラ設定の橋渡しができるかどうかを測っています。ここでも、採点講評では「下限値設定の目的を『重要システムの性能確保』という観点から説明できているかどうか」が得点の分かれ目になったとされており、単語を列挙するだけの答案では不十分であることが分かります。

このように、平成29年度春期 応用情報技術者試験 午後問4「システムアーキテクチャ」は、仮想化環境を題材としながら、用語知識、リソース計算、構成設計、障害時の挙動といった複数の観点を総合的に問う構成になっており、午後問題の中でも「文章読解と計算問題のバランス」が非常に良い問題です。午後試験で合否を分けるのは、難解な計算テクニックよりも、まず問題文に書かれた条件を丁寧に読み取り、その条件に忠実に数値を整理し、自分の頭の中で構成図やリソース配分をイメージできるかどうかです。今回の動画では、各設問を個別に解説するだけでなく、「なぜ50%を引くのか」「なぜこの組合せが妥当と言えるのか」「なぜ下限値という仕組みが必要なのか」といった出題者の意図を軸に、問題全体を一つのストーリーとして読み解けるよう構成しています。システムアーキテクチャ分野を得点源にしたい方はもちろん、仮想化やサーバ統合の現場感覚を身につけたい方にとっても、有意義な学習素材となるはずです。この動画を通じて、単なる「過去問の答え合わせ」を超えた、システム設計の考え方そのものを身につけ、午後問題全体に通用する読解力と計算力を磨いていきましょう。