両親ともに耳が聞こえない４人家族の物語　美瑛の大自然の中、子育てに民泊経営に挑戦

美瑛町で暮らす４人の家族。
両親ともに耳が聞こえません
それでも諦めない心で戦を続ける家族を取材しました。

春日史恵さん「え、もう食べるの？みんなで揃って『いただきます』しようよ」
春日晴樹さん「早いよ・・・ちょっと待って…」

上川の美瑛町で暮らす春日さん一家。
父親の晴樹さんと母親の史恵さんは耳が聞こえません。

一方、娘の風花ちゃんと息子の空知くんは耳が聞こえます。
家族でのコミュニケーションは唇の動きを読み取る口話と手話がメインです。

晴樹さん「きょうは食べるの早いね。お腹空いたの？」
空知くん「うん」
晴樹さん「きょう幼稚園で何していたの？」
空知くん「塗り絵していた」
晴樹さん「塗り絵だけ？」
空知くん「外にも行った」
晴樹さん「あれ？靴下は？」
空知くん「それでも外で遊んだ」

史恵さん「私は生まれた時は聞こえていました。１歳の時に高熱で片耳が聞こえなくなりもう片耳で聞こえる耳で頑張ってきました。１０歳の時に徐々に聴力が落ちて完全に聞こえなくなりました。」

晴樹さん「私は生まれた時から聞こえないので、音のない世界が当たり前かなと思っています。」

道外で暮らしていた２人は２０１６年に友人を通して知り合い、翌年に富山で結婚。
新婚旅行で訪れた美瑛町の豊かな自然の美しさにほれ込み移住。
２年前には、小高い山の土地を買って家を建てました。

晴樹さん「見晴らしがいい」
史恵さん「私は山が好き。晴樹は町を見るのが好き。だからちょうどいい。」

この日はあいにくの曇り空。
晴れていれば綺麗な大雪山の山々を一望できます。
庭にはエゾリスがやってくることも・・・

晴樹さん「あ、光ってる！」
光の点滅はお昼寝から起きた風花ちゃんが泣いている合図。先月１歳になったばかりです。
お兄ちゃんの空知くんは幼稚園に通い、もうすぐ５歳になります。

晴樹さん「そら、そらの名前言ってみて。私の名前はって」
空知くん「僕の名前は、そ・ら・ち」
史恵さん「指文字を覚えたいって言ったのは自分からだよね。そら～」

空知くん（うん）「【ふうか】は【か】は？」
史恵さん「【う】はこれだよ」「【か】はちょっと難しいかな。」

晴樹さん「空知がパパとママが聞こえないからどうやって話せばいいかを考えて手話で話そうという心が嬉しいんですよね。」

そんな晴樹さんには大切にしている言葉があります。
『できないって、だれが決めた？やってみなきゃ、わからない。
できるだけやってみよう。』

実は晴樹さん、専門学校を出た後、猛勉強して子供のころから憧れていたＪＡＸＡ宇宙航空研究開発機構で３年間働くなど様々な挑戦を続けてきました。

去年７月からは新たな挑戦を始めています。
自宅の一室を貸し出す民泊「はるの空」の経営です。

晴樹さん「私は若い時に世界一周で色々なところに泊まったり日本放浪も色々なところに泊まったり人と出会ってきたので私も人と向き合う仕事がしたいなと思って民泊を始めました。」

史恵さん「民泊を始めるって聞いた時は『本当にできるの？ここの山の上にお客さん本当に来るの？』と半信半疑で不安しかなかったですね。」

晴樹さん「今はかなりいっぱい来ているので良かったです。」

建物の外には手作りの露天風呂を設置。
これが人気で民泊の予約はほとんど埋まっています。
この日は、埼玉から友人が宿泊に来ていました。
民泊の利用者とは、口話や筆談でコミュニケーションをとります。

利用客「困ることはほとんどないです。夢を次々に叶えているんですね。
諦めないからこそいつも叶えているそういうところがすごく惹かれて尊敬しています。」

聞こえなくても…子育てや民泊など挑戦を続ける晴樹さん。
次なる目標があります。

晴樹さん「子ども２人を大人になるまで育てようという気持ちはあります。
それが終われば夫婦二人で世界一周に行こうかなって。」
史恵さん「子育てを卒業したら一緒に行くことを楽しみにしています。」

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