NTTが世界初光量子を開発

NTTの「量子×光」戦略の要約：IOWNによるインフラ革命と2030年光量子コンピューター実用化への道
NTTは、電気信号に依存する現在のICTインフラが直面するデータ爆発と電力消費の課題を解決するため、光技術を核とした二つの巨大な戦略を推進しています。一つは次世代通信基盤IOWNの実現であり、もう一つは光量子コンピューターの実用化です。
1. IOWN APNによる「距離的制約の消滅」に向けた実証
NTTグループとブロードバンドタワー（コード：3776）は、距離的な制約を超える新たなデータプラットフォームの実現に向けた共同実証を2025年11月17日より開始しました。
• 目的: 物理的に離れたデータセンター（DC）間で、まるで一つのストレージシステムのように運用できる環境を構築し、データ配置場所の制約をなくすことです。
• 技術的基盤: IOWN（Innovative Optical and Wireless Network）の中核技術であるAPN（All-Photonics Network）超低遅延、超大容量、高信頼性を提供します。
• 実証内容: 1,000kmを超える距離を隔てたデータセンター間（ブロードバンドタワーの新鹿島サイトとNTTの既存の大手町データセンターなど）で、ストレージシステムを仮想的に一体化して運用する実証を行います。
• 社会的意義: この実証が成功すれば、データ利用における大きな障壁となっていた遅延の問題が解消され、AIワークロードの最適化や地域と都市をつなぐ地域分散型社会の実現に貢献すると期待されています。
2. 2030年光量子コンピューター実用化戦略
NTTは、東大発のスタートアップ企業OptQCとの連携協定を11月18日に締結し、2030年までに光量子コンピューターの実用化を目指すと発表しました。
• 光方式の採用: NTTが目指すのは、情報処理に電気ではなく光の粒を用いる新方式の量子コンピューターです。これにより、小型・省電力化が可能となり、AIの活用で増える電力需要の抑制にもつながると期待されています。
• 技術的背景: 量子コンピューターは、スーパーコンピューターで数億年かかるような複雑な計算をわずか数分で実行できる可能性を秘めています。NTTは、通信分野で約60年にわたり研究開発してきた光技術の知見をこの光量子コンピューターに活用し、拡張性と信頼性に優れたシステムを実現することを目指しています。OptQCは、東京大学大学院工学系研究科の古沢・遠藤研究室の研究成果を基に2024年に設立されました。
• 実用化による利益: 実用化されれば、大都市での交通や物流の最適化、空気から効率的に窒素肥料を作り出す技術開発、個々の体質に合わせた創薬が可能になるなど、社会経済に莫大な利益をもたらすとされています。
• 活用検討のスケジュール: NTTの島田明社長は、2028年ごろから活用事例を検討していくと強調しています。
3. その他の主要な成長戦略の進捗（2025年度第2四半期決算より）
NTTの決算（2025年4月～9月期）では、未来への投資が明確になっています。
• 連結業績: 営業収益は6兆 7,727億円で過去最高を更新し、当期利益（純利益）は前年同期比7.4%増の5,957億円と増益でした。
• 減益要因と投資： 連結増益は、NTTデータグループによるデータセンター（DC）の売却益1,295億円（営業利益の増益要因1,200億円）によって吸収されました。一方、中核の総合ICT事業は、NTTドコモが携帯電話関連の販促強化や基地局増設にコストをかけているため、786億円の減益要因となりました。
• NTTドコモの成長分野: NTTドコモのスマートライフ事業と法人事業は増収増益を維持しており、特に金融・決済領域では住信SBIネット銀行の参画に伴う**「d NEOBANK」**の開始など、非通信事業の強化が進んでいます。
• AI戦略とIOWNの推進: NTTは、高性能・高セキュア・低コストな**純国産LLM「tsuzumi 2」**を提供開始するなど、AI時代の顧客ニーズに対応するプラットフォームの進化を目指しています。また、IOWN APNは香港の金融業界向けに商用提供されるなど、海外展開も進んでいます。
これらの取り組みは、NTTが従来の通信事業の限界を超え、光技術と量子計算能力を核とした未来のグローバルインフラ企業へと変貌する戦略の「両輪」を加速させていることを示しています。