日本薬局方が「方」と表記される理由とは？

日本薬局方が「方」と表記される理由は、歴史的経緯と語源に基づいています。
中国宋代の影響
「局方」の語源は、平安時代に日本へ伝わった中国宋代の処方集『太平惠民和剤局方』（1078-1085年）に遡ります。
この書名の「局方」が日本語に定着し、後の日本の公定書名に継承されました。
江戸時代の蘭方医による翻訳
江戸中期、蘭方医・中川淳庵がオランダ語の「Pharmacopoea」（薬局方）を「和蘭局方」と訳したことが直接の起源です。
この訳語選択が明治時代の「日本薬局方」制定時に公式名称として採用されました。
「方」の字義
「方」は「方法・処方」を意味し、「法」が法律全般を示すのに対し、具体的な調製方法や品質基準を規定する性格を反映しています。
薬局方は法的拘束力を持つ規格書ですが、あくまで「基準を示す文書」という位置付けのため「方」が用いられました。
「局」の由来
「局」は中国宋代の医療機関「和剤局」に由来し、日本では「調剤を行う公式機関」という意味で定着しました。
明治期に「薬局」が正式名称となったことも影響しています。
現在の日本薬局方は薬事法（現・医薬品医療機器等法）第41条に基づく公定規格書として、医薬品の品質基準を定めていますが、名称はこの歴史的経緯を継承しています。