【大正6年製】さようなら炭鉱電車 大牟田貨物 三井化学専用線 2020年5月廃止

0:00 　炭鉱の遺跡と炭鉱電車
1:08　ワイヤー式踏切と踏切小屋が今もなお残る
2:36　旭町駅 分岐器連動装置
3:54　JR線より貨車を受取り、宮浦駅へ
4:48　宮浦駅到着、大正製デキによる入換作業
8:28　工場〜宮浦駅入換と電鐘式踏切
10:09　エンディング ー炭鉱電車の終焉ー

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2020年5月7日 福岡県大牟田市の三井化学専用線が運行を終了した。この専用線は、鹿児島本線大牟田駅の北にある仮屋川操車場と宮浦駅を結び、黒崎駅からの硝酸、南延岡駅からの液体塩素を輸送していた。硝酸の製造元であった三菱ケミカルが製品の製造を中止し、硝酸の入手方法が変更されたことにより、鉄道輸送が終了した。

この専用線の歴史は、明治時代まで遡る。かつて大牟田市と隣接する熊本県荒尾市では、日本有数の石炭の採掘地であった。のちに世界遺産に登録される「三池炭鉱」である。採掘された石炭は、鉄道と船舶で輸送され、それらは日本の近代化の礎を築いた。この輸送を担った鉄道が三池鉄道である。全盛期には150kmにおよび、地元では「炭鉱電車」と呼ばれ親しまれていた。時は流れ平成9年、エネルギー革命により石炭需要が低下、ついに採掘が終了、あわせて三池鉄道も廃止となった。しかし、宮浦駅〜旭町駅の旭町支線1.8kmが三井化学に譲渡され、材料搬入用の専用線として生き残った。これが宮浦駅〜仮屋川操車場の三井化学専用線である。

この専用線では、路線だけでなく、使用されている機関車も三井鉄道時代からのものであった。本線で使用する45t機18号機、19号機、入換用の20t機の9号機、11号機、12号機の5両。18号機、19号機は、昭和11年製の凸型デキ、かつて全国の地方私鉄などに導入された戦前型東芝製のデキで、伊豆箱根鉄道に同型機が2両存在するが、これらは車両輸送用で、すでに定期的に運行されているものはなく、毎日定期的に運行されていることは非常に貴重な存在であった。20t機の歴史はさらに遡る。9号機は大正4年、11号機、12号機は大正6年の製造である。三井鉄道は、明治42年に電化された。足尾洞山で日本で初めての電気機関車が登場したのち、まだ日本で電気機関車を開発する技術がなかった電気機関車聡明期のことである。電化された明治42年にアメリカGE製の15t機が導入され、その2年後、ドイツシーメンス社製の20t機1号機が導入された。国鉄では碓氷峠向けのアプト式ED40型が登場した年のことである。この輸入した1号機の構造を模倣、コピーしたものを国産で製造し、それが9号機、11号機、12号機なのである。これら車両は、明治44年に導入された1号機同様のデザインをしており、まさに電気機関車聡明期の姿を現代に伝えるものであった。

仮屋川操車場から宮浦駅までの1.8kmの区間にも歴史を伝える鉄道風景が残っていた。仮屋川操車場は、かつて三井鉄道の旭町駅であった。操車場の入り口には今でも信号扱所があり、その建屋からは転轍機を操作するためのロッドが伸びていた。現在、自動化が進み、ロッドのような原始的な方法で転轍機を操作する信号所も数を減らしている。さらに、国道208号線との踏切では、ワイヤー式の踏切に踏切小屋、踏切警手と、もはやここでしか見ることができない光景を見ることもできた。

日本の近代化を支えてきた100年以上の歴史を持つ鉄道、そして明治から戦前にかけて製造された旧型電気機関車が、昭和の鉄道風景の中を走る、それはまさに令和の時代に残された”奇跡の鉄道”であった。今後、三井化学では、専用線廃止を記念したイベントを実施する予定となっており、再びこれら機関車と出会えることを期待したい。

＃大牟田貨物
＃三井化学専用線
＃炭鉱電車

2020年1月撮影

音楽：「The End」Quincas Moreira
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