【ドイツ音楽】トライゾネシア・ソング　旧西ドイツ国歌 1948-1949　(概要欄に和訳)

// 日本語歌詞
親愛なる友よ
古い時代はもう過ぎ去った
そこで笑っていようが泣いていようが
世界はどんどん進んでいく
平凡な外交官どもが
今日、力強い政治を行うのだ
彼らは新たな国を創設し、国家を変革した
けれど今、私たちはどうだろう？

(Refrain)
我々はトリゾネシアに生まれ育った
Heidi tschimmela tschimmela tschimmela tschimmela bumm
私たちには燃え盛る野生的な少女がいる
Heidi tschimmela tschimmela tschimmela tschimmela bumm
確かに私たちは人喰い鬼ではないかもしれないけれど
でもキスはもっと大好きだ
我々はトリゾネシアに生まれ育った
Heidi tschimmela tschimmela tschimmela tschimmela bumm

コロンブスがアメリカを見つけて、新大陸が発見された
マルコ・ポーロの見た全てが、その後の文化に影響を与えた
スウェン・ヘディンはヒマラヤで、熱い砂漠の砂の中を歩んだ
北極点にはアムンゼンがベットを立てた
けれども、今まで誰も私たちのことを知らなかったのだ

だが異国の人よ、これを知ってくれ
トライゾネシア人にはユーモアがある
文化があり、精神がある
それに敵うやつは誰もいない
ゲーテさえもトライゾネシアの出身で、
ベートーベンの揺籃の地であるのも有名だろう
いいや、中国にはそんなものはない
だからこそ、私たちは祖国を誇りに思うのだ


// 詳細
https://de.wikipedia.org/wiki/Trizonesien-...

„Trisonesien-Song” は、1948年にカール・ベルビューアによって書かれたドイツの謝肉祭歌(カーニバルソング)。ナチス・ドイツが連合国に降伏して以来、現国歌である„Deutschlandlied“が非公式なものとされたために、公式国歌がなかった当時の西ドイツ（トライゾーン）で代替的な国歌とされていた。

この歌は、過去の戦争から距離を置いたということを示し、自分達の置かれた状況を冗談として笑い、揶揄するものとして解釈されている。
„Menschfresser“(人喰い) という言葉は、„Eingeborenen“(原住民・土着民) と密接に関連する言葉であり、音楽学者であるフレッド・リッツェルは、1998年の彼の楽曲分析において、戦死者やユダヤ人殺害を背景にしたこの言葉の使用が、恐ろしく、不謹慎だと述べている。
音楽心理学の研究においては、国家的な孤立からの克服を願望していたとする根拠が見つかっている。
歌詞は、Verballhornung (カコグラフィー, 意図的なスペルミス) によって、„Am deutschen Wesen mag die Welt genesen“という政治スローガンの一部である„Deutschen Wesen“からより粗雑で野蛮的な表現として„Wesien”へ変えられている。

この謝肉祭歌(カーニバルソング)は、「1948年の精神と政治の歴史を映す鏡」であり、「自虐的皮肉に包まれた、国家の孤立を克服したいという願望」であり、通貨統合と共和国建国の間のドイツ人の状況を、他に類を見ないほど皮肉たっぷりに描いたものである。ノイゲバウアーは、この歌は、他の現代的な文書にはほとんど見られないような、西側3つの占領地域におけるドイツ人の心境を反映したものであるとしている。

„Menschenfresser“などの表現は、一見すると奇妙であるが、実際には国家主義的なイデオロギーを茶化したものであり、ナチス・ドイツのイデオロギーとは対照的である。
この歌詞に関して行われた研究では、「国家的な孤立を乗り越えるという願望を、自虐的な形で表現している」という結論が出された。この歌は、戦後のドイツにおいて自虐的なユーモアとして受け入れられ、ナチス時代のイデオロギーに対して反論する一環としても理解された。
このような歌詞や歌は、戦後のドイツにおいて国家の再建と過去の闇に対する取り組みが進行していた時期に現れたものであり、それは自虐的なユーモアを通じて、新しいドイツのアイデンティティを形成し、ナチス時代の過去を克服しようとする試みであった。
カール・ベルブアーの歌詞は、ナチス・イデオロギーを風刺し、戦後のドイツの自虐的なユーモアとして解釈される一方で、国家の再建と新たなアイデンティティ形成の試みを反映していると言える。


// トライゾネシアソングに関する記事の和訳及び引用
„Trizonesien-Lied sorgte 1949 für Aufregung“ vom Artikel des Kölner Stadt-Anzeigers
(https://www.ksta.de/redaktion/trizonesien-...)

1949年春、英国の由緒ある「タイムズ」紙の見出しには「ドイツ人がまた生意気になっている」と書かれていた。第二次世界大戦が終結し、褐色の恐怖政治が続いてからわずか4年後、孤立し、部分的となったこの地域を占領していたイギリスは、ドイツ国内で急速に高まっている再統一主義の息吹を察知した。そして、何よりもカーニバルのヒット曲で英国人の不快感を掻き立てたのは、ケルン出身で、作詞家・作曲家・歌手の男、カール・ベルビュールと、彼の作品である„Wir sind die Eingeborenen von Trizonesie“(我々はトリゾネシアに生まれ育った)であった。

1948年の11月11日、当時48歳だったベルビュールはベーカリーの修業を終えた。そのとき既に「ハイデヴィツカ、ヘル・カピテン」などの陽気なヒット曲で知られていた彼は、ラジオで„Trizonesien-Lied“(トライゾーンリード) を披露した。しかし、このとき彼は急遽タイトルを変更せざるを得なくなった。当初は、この作品は„Bizonesien-Lied“と呼ばれていたが、11月11日の直前に、英米のBizoneがフランスのZoneと統合され、Trizoneとなったためである。

間もなくして、この歌はドイツ国内で広く響き渡っていた。そして、ケルンで開催される初の国際自転車レースでは、表彰式で、ベルギーとスイスの国歌に続いて、ドイツの代替国歌として„Trizonesien-Lied“が演奏されることになった。この曲の歌詞を表面的に見てみれば、他国が最初はイライラしているだろうことも容易に想像がつくだろう。

『我々はトリゾネシアに生まれ育った
　私たちには燃え盛る野生的な少女がいる
　確かに私たちは人喰い鬼ではないかもしれないけれど
　でもキスはもっと大好きだ
　親愛なる友よ
　古い時代はもう過ぎ去った
　そこで笑っていようが泣いていようが
　世界はどんどん進んでいく......』

かなりの自信に満ちているように聞こえるが、注意深く耳を傾けると、ベルビューア (1977年に死去) が本当は何を望んでいたのかがすぐにわかる。第三帝国時代には宗教にまで昇華されたほどの „Deutschen Wesen“(ドイツ的存在) が、„Wesien”へverballhornenされている(嘲りとして意図的にスペルミスされている)ことは、ナチスのイデオロギーとは全く異なるものである。
科学者でさえ、ベルビューアの、„Menschenfresser, die umso besser küssen”(人を喰らう者はより上手にキスする) を研究対象としてきた。„Zur psychologischen Funktion des Karnevalsschlagers“（カーニバルのヒット曲の心理的機能について）という研究書には、「自虐的皮肉に包まれた、国家の孤立を克服したいという願望」という記述も存在する。

そうして他国はすぐにこの歌を理解し、愛するようになっていった。イギリスの捕虜収容所で行われた、地元住民とドイツ人捕虜とのサッカーの試合の前には、バンドはまずイギリスの国歌『God save the King』を歌い、次に『Trizonesia』を歌った。


// Deutsch
Mein lieber Freund, mein lieber Freund
Die alten Zeiten sind vorbei
Ob man da lacht, ob man da weint
Die Welt geht weiter, eins, zwei, drei
Ein kleines Häuflein Diplomaten
Macht heut' die große Politik
Sie schaffen Zonen, ändern Staaten
Doch was ist hier mit uns im Augenblick?

(Refrain)
Wir sind die Eingeborenen von Trizonesien
Heidi tschimmela tschimmela tschimmela tschimmela bumm
Wir haben Mägdelein mit feurig wilden Wesien
Heidi tschimmela tschimmela tschimmela tschimmela bumm
Wir sind zwar keine Menschenfresser
Doch wir küssen umso besser
Wir sind die Eingeborenen von Trizonesien
Heidi tschimmela tschimmela tschimmela tschimmela bum

Kolumbus fand Amerika, ein neuer Erdteil ward entdeckt
Was Marco Polo alles sah, wurd dann von der Kultur beleckt
Swen Hedin war am Himalaya, er schritt durch heißen Wüstensand
Am Nordpol stand Amundsen's Heija
Doch uns hat keiner je zuvor gekannt

Und fremder Mann, damit du's weißt
Ein Trizonesier hat Humor
Er hat Kultur, er hat auch Geist
Darin macht keiner ihm was vor
Selbst Goethe stammt aus Trizonesien
Beethoven's Wiege ist bekannt
Nein, sowas gibt's nicht in Chinesien
Darum sind wir auch stolz auf unser Land