【短編】魔法のランプ

【魔法のランプ】


むかしむかし、はるか西の、遠い国の話。

乾いた風が吹く砂漠のはずれ。
少女、ミラがひとりで遊んでいた。

そこで、錆びた金のランプが砂に埋もれてるのを見つけた。ミラはしゃがみこみ、そっとそれを手に取った。

 袖でランプをこすったその瞬間――

もくもくと煙が巻き上がり、巨大な魔人が現れた。

「我は願いを叶える者……一つだけ、どんな願いでも叶えてやろう」

ミラはしばらく見上げたまま、黙っていた。
そして、ぽつりとつぶやいた。

「おじさんが、幸せになりますように」

魔神は聞き返した。

「……おじさんとは我のことか？」

ミラはコクリとうなずいた。

「……なんでも叶うのだぞ？それでいいのか？」

「うん」

ミラは魔人をジッと見つめている。


光が魔人を包み込み、魔神をしばる鎖が音を立ててほどけていく。
巨大な姿は徐々に小さくなり、風の中に青年の姿が現れた。

「……初めてだな、こんな願いを叶えたのは」

青年は楽しそうに笑い、ミラの頭を優しくなでた。ミラもつられてニコニコしている。

「そうだな…これからはジンとでも名乗るか。何か困ったことがあったら呼んでくれ。友だちの力になれたら、たぶん幸せだ」


ミラは新しくできた友だちの手をとり、元気に歩き出した。

砂漠の空は金色に染まり、やさしい風が吹いていた。

ふたりの足跡が、夕日に向かってまっすぐ続いていった。