きつねのよめいり

よんであげるなら４さいから
じぶんでよむならしょうがっこうしょきゅうむき

きつねのよめいり

さく　まつやみよこ
え　わたせやすお

ふくいんかんしょてん

むかし、やまおくの　すいしゃごやに、
ひとりの　おじいさんが　すんでいました。

ある　あめの　ふるひのこと、おじいさんは
あめに　うたれて、いまにも　しにそうに　なっている、
いっぴきの　こぎつねを　みつけました。
「おお　おお、かわいそうに。まいごの　こぎつねじゃ、
こんなに　ぬれて　さむかろうに」

おじいさんは　こぎつねを　だいて、
すいしゃごやに　かえると、
いろりに　どしどし　ひを　たいて、
あたためて　やりました。
おいしい　おかゆも　たべさせました。
よるが　くると、
こぎつねを　だいて　ねむりました。

こうして、おじいさんと
こぎつねは　なかよく
くらすように　なりました。
おじいさんが　やまへ
たきぎを　とりに　いくときは、
いっしょに　ついていきます。
はたけを　たがやすときには、
そばに　ちょこんと　すわって、
くびを　ふっています。

おじいさんに　かわいがられて、
こぎつねは　どんどん　おおきくなり、
うつくしい　むすめぎつねに
なりました。なまえも、おさとと
つけて　もらいました。

ところが　あるひのこと、ふと　きがつくと、
おさとの　すがたが　みえません。そして
それっきり、つぎのひも、そのつぎのひも、
おさとは　かえってきませんでした。
「おさと　やーい、おさとぎつね　やーい」
おじいさんは　やまから　やまへ、
たにから　たにへ、さがして　あるきました。
それでも、おさとは　でてきません……。

すると　きゅうに、ひでりあめが
ぱらぱら　ふってきました。
「ほう、きつねの　よめいりじゃ」
どうでしょう。こちらの　やまから
あちらの　やまへ、なないろの　にじが
かかり、そのうえを、きつねの
よめいりぎょうれつが　しずしずと
わたって　いくのです。ながい
ふりそでの　はなよめぎつねは……
「あっ、おまえは　おさとぎつね！」
おじいさんは　おどろいて
さけびました。すると、ぎょうれつは
ぱっと　きえて、あとには　おひさまが
まぶしく　てっているばかりでした。

そのよ、ひとりで　さびしく、いろりで
ひを　たいている　おじいさんの　ところへ、
とんとんと　とを　たたいて、
だれか　きたようです。
ふしぎに　おもって、おじいさんが　とを
あけて　みますと、いっぴきの　おやぎつねが
くちに　おりづめを　くわえて、きちんと
すわっているのでした。

きつねは　おりづめを　おくと、おじいさんを　みあげ、
こーんと　ひとこえ　ないて、すがたを　けしました。
それは、たいや　かまぼこや　たまごやきの　はいった、
りっぱな　およめいりの　おりづめでした。

「おさとや、おまえは　もう　そんなに　おおきくなって、
およめに　いったのか。そうか、そうか。
それで、かあさんが　おれいに　きたのか」
おじいさんは　そういって　なきました。


１９６０ねん８がつ１にち　げっかん「こどものとも」はっこう
はっこうしょ　ふくいんかんしょてん
ていか（ほんたい８００えん＋ぜい）

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