変圧器、許容電圧、許容電流、最大表見電力 S：なぜ変圧器の最大電力はボルトアンペアで表されるのか？ || 演習1

従来の基本変圧器の特性（例：2400/120 [Veff] および S = 9600[VA]（表見電力））に基づき、これらの特性を解釈し、変圧器の初級側および二次側の許容電流ならびに許容表見電力を計算する。変圧器は理想的または完璧なものと仮定する。

V = 2400/120 という特性は、変圧器の初級側の許容有効電圧 V1eff が 2400[Veff] に制限され、二次側の許容有効電圧 V2eff が 120[Veff] に制限されることを意味します。電流の方向や電圧の極性は考慮されません。なぜなら、これらは有効値であるためです。

定義上、表見電力は S = Veff × Ieff であり、変圧器が理想的であると仮定されるため（つまり、ジュール損失がなく、一次側と二次側の磁気結合による電力伝達時の電力損失もないため）、一次側で消費される電力はすべて二次側に伝達されます。したがって、S1 = S2 となり、S1=V1eff . I1eff および S2 = V2eff . I2eff となります。S = 9600[VA] は、過熱や変圧器の巻線の破壊を避けるため、超えてはならない許容表見電力 S を表しています。

1)変圧比は n = V2eff/V1eff = i1eff/i2eff で表され、V2eff と V1eff から n を導き出せます。つまり n = 120/2400 、 n = 0,05 です。

2) 電流 i1eff と i2eff は2つの異なる方法で計算できます。変圧比 n を使用するか、または等しいことがわかっている表見電力 S1 と S2 を使用します。この演習では、許容電力（または利用可能電力）の概念と、理想的な変圧器の理想的な性質に慣れるために、S1 と S2 を使用します。

3) S1 = V1eff.i1eff および S2 = V2eff.i2eff 、S1 = S2 であるため、 S1 または S2 は許容 S を超えてはならないため、S1 と S2 を S に置き換えると、次のように得られます：
S = V1eff.i1eff および S = V2eff.i2eff、したがって：
i1eff = S/V1eff = 9600/2400 = 4[Aeff]
i2eff = S/V2eff = 9600/120 = 80 [Aeff]

4) 比率nはn = i1/i2 = 4/80 = 0,05で確認できます。

注：変圧器の鉄骨構造における損失による発熱は、磁束の大きさに依存します。さらに、変圧器の2つの巻線に電流が流れる際にも発熱が発生します。したがって、変圧器の巻線を損傷しないように過熱を避けることが重要です。そのためには、巻線を通る電流と一次側に印加される電圧を制限する必要があります。これらの有効値が熱を生成し、電流と電圧の位相差は変圧器の加熱に影響しません。
表見電力はS = Veff.Ieff [V.A]であり、これは明らかにボルトアンペア[V.A]であり、ワット[W]ではありません。なぜなら、これは有効電力ではないからです。有効電力は平均電力であり、[W]で表されます。つまり、有効電力 = 平均電力 = Veff.Ieff.COS(φV° - φI°)です。ただし、100 [W] を消費する抵抗負荷または100 [V.A] を消費する誘導性または容量性負荷は、変圧器内で同じ量の熱を生じます。なぜなら、純粋な抵抗負荷の場合、位相差はゼロであり φV° - φI° = 0° で、COS(0°) = 1 であるため、P = Veff.Ieff となるからです。( 1 ) = Veff.Ieff = 誘導性または容量性のリアクティブ負荷の表見電力 S。

変圧器の最大電力がワット [W] ではなくボルトアンペア [V.A] で表される理由は次の通りです：
純粋な誘導性負荷または純粋な容量性負荷が変圧器の二次側に接続されると、ワットで表される有効電力を消費しません。例えば、変圧器の最大許容電流が2[A]で、誘導負荷が二次側電圧V = 50[V]下でリアクティブ電力Q = 4000 [VAR]を消費する場合、オームの法則よりIq = Q/V = 4000 [VAR] / 50[V] = 80 [A]となり、リアクタンス電流 Iq は許容電流の 40 倍に達し、変圧器が焼損します。一方、有効電力（ワット）はゼロ（P = 0）です。なぜなら、誘導性リアクタンスには内在する抵抗がないため、有効電流（Ip = 0）を消費せず、したがって P = 0 となるからです。
変圧器の最大電力を有効電力（ワット単位の有効電力）で表しても、誘導性または容量性負荷が引き出すリアクトル電流（Iq）に関する情報は得られません。そのため、変圧器メーカーは有効電力Pを[W]ではなく、表見電力Sを[V.A]で表示しています。

有効値と熱等価値に関する詳細については、以下の動画をご参照ください：{ 有効電圧、RMS値、および熱等価値：詳細な概念 | 演習9 - 動画1/2と動画2/2 }。