穢霊さんを見つけたらご連絡ください

2012年未明に動画投稿サイトへ3本の動画がアップされた。
〈真田学〉という人物の日記に近い動画。
再生数は決して多くはない。投稿後すぐは再生数1回なんてザラだった。
ただ『不法占拠を見に行ってみたよ』と題した動画が1万再生となる。
決して、真田学の動画が芸術的であったり、カリスマ性があったわけでは無い。
視聴者の興味を引いたのは、映り込んだ1枚のポスターだった。
〈穢霊さんを探しています〉
真田学が歩く街に貼られていたポスターが話題を呼んだのだ。
彼は、そのポスターについて語りはしなかった。
昔から側にある、つまらない日常の変わらない風景の一部かのように、特段騒ぎ立てることもしない。
そもそも、彼の動画は、あくまで彼自身のプライベートな部分を言語化し、録画という手段を用いて補足しているだけにすぎないのだ。ナルシズムな独白とも言える。

ただこの出来事を見ていて思うことがある。
真田学が、つまらない日常で別なことを見出していたら。
恋人か、あるいは友人か、それとも趣味か…とにかく、動画投稿以外の何かを見つけていたら、きっと失踪する事もなかったのだろう。

「穢霊さんってなんですか？」

たった一つのコメントが、彼の日常の異点になった。
真田学にとって、何の変哲もないポスターが当たり前ではなくなった。

ここからは想像だ。妄想とも言い換えれる。

真田学が、何の疑問も抱いていなかった日常を調べてしまい
その調べるという行為がソレにとって、とても都合の良い行動だとしたら。
認識される事で、存在が確定するモノだとしたら。

あくまで、私の妄想だ。恐怖を盛り上げるための誇張でしかない。

“インターネット怪談ルポライター 2025年発行記事より抜粋”

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