都市モノレール法とは　What is the Urban Monorail Law?

正式名称を「都市モノレールの整備の促進に関する法律」とする都市モノレール法は、1972年（昭和47年）11月17日に公布・施行されました。公布と施行が同日に行われたのは珍しく、当時、都市における新たな交通インフラの早期整備が強く求められていたことを示しています。
この法律が必要とされた背景には、高度経済成長期における都市交通の問題がありました。自動車交通量の急増により、都市部では深刻な交通渋滞や大気汚染が発生。一方、既存の都市交通機関、特に路面電車は小型で運行速度も遅く、輸送力に限界がありました。そのため、新たな都市交通の選択肢として注目されたのが「モノレール」でした。
モノレールは、高架構造により渋滞の影響を受けにくく、鉄道並みの輸送力を持ちながら、比較的低コストで整備が可能という特長を持っています。しかし、当時の法制度上ではモノレールの明確な位置付けがなく、鉄道でも軌道でもない中途半端な存在となっていました。
この法的な不備を解消するために制定されたのが都市モノレール法です。モノレールはこの法律により、「道路上に整備される新たな都市交通施設」として法的に位置付けられました。つまり、鉄道のように見えながらも、制度上は「道路の一部」として扱われることになったのです。
この点は制度上の大きな転換点でした。モノレールが道路とみなされることで、道路整備の補助金を活用できるようになり、これが都市モノレール制度の最大の経済的メリットとされています。
この補助制度は、1974年に建設省によって「モノレール道等整備事業」として創設され、支柱・軌道桁・駅舎の骨格などのインフラ部分が「特殊街路（都市モノレール専用道）」として都市計画に位置付けられ、国庫補助の対象となりました。さらに1975年（昭和50年度）には、案内軌条式の新交通システム（AGT）も制度の対象に加えられ、名称も「都市モノレール等整備事業」となります。
その後、2007年以降、道路整備特別会計の見直しに伴い制度は再編され、2010年からは「社会資本整備総合交付金」に統合。現在では、支柱・桁・駅舎などのインフラ部に加え、信号保安設備や配電線、変電所、さらにはモノレール車両自体まで補助対象となっています（ただし車庫の建物部分は除く）。
あわせて、「調査費補助制度」も設けられ、都市モノレールの導入が必要とされる地域において、関連道路や構造の調査に対しても補助が行われるようになりました。
この法律に基づき整備されたモノレールには、多摩都市モノレール、千葉都市モノレールなど、名前に「都市」が付くものがあります。一方、北九州モノレールや大阪モノレールのように、「都市」の名称が入っていない例もありますが、これらも都市モノレール法に基づいています。「高速鉄道」という名称は、路面電車に代わる高速な交通手段という位置づけを示すためのものにすぎません。
なお、東京モノレールや湘南モノレールのように都市名が入らず、都市モノレール法の対象外となっている路線もあります。これらは法律の制定前に開業し、鉄道として整備された経緯があります。特に東京モノレールは河川や当時の海上空間に敷設されており、都市モノレール法で求められる「道路上の整備」という要件を満たしていません。湘南モノレールも、私道として整備された道路上に建設されたため、鉄道として分類されています。

現在では、新規開業するモノレールのほとんどが都市モノレール法に基づく「軌道」として整備されており、主要道路や中央分離帯に沿って建設されているケースが多いのが特徴です。
都市モノレール法では、モノレールの形式として「跨座式（日本跨座式）」と「懸垂式（サフェージュ式）」の2種類が定義されています。これは1967～68年に運輸省が日本モノレール協会に委託して行った標準形式の研究によるものです。
都市モノレールの計画・建設においては、以下の3つの都市計画上の位置付けが必要とされます。
特殊街路：モノレールの支柱・軌道・駅などのインフラ部分を都市計画上で位置付ける。
導入街路：モノレールと接続する道路や補助的な道路整備を位置付ける。
都市高速鉄道：モノレールを高速大量輸送手段として都市計画上で定義する。
この3点の都市計画決定は、都市モノレール法第3条に基づき、都市計画区域内での整備において必要不可欠です。
実際、近年の多摩モノレール延伸（箱根ヶ崎方面）に関する説明会でも、この3つの計画要素が明確に示されました。モノレール本体は「立川都市計画 都市高速鉄道 都市モノレール第1号線」、軌道は「立川都市計画道路 9・6・1号 多摩南北線」として、導入街路には「立川都市計画道路 3・2・4号 新青梅街道線」などが示されています。
このように、都市モノレールの整備は単に交通インフラの建設にとどまらず、都市計画制度との密接な連携のもとに進められているのです。

The Urban Monorail Law of Japan

The Urban Monorail Law, officially enacted and enforced on November 17, 1972, was established to promote the development of monorails as a new urban transportation system amid worsening traffic congestion and air pollution during Japan's rapid economic growth.

At the time, monorails lacked a clear legal classification—they were neither railways nor tramways. This law resolved that by defining monorails as urban transport infrastructure built on roads, making them eligible for road-related subsidies. This unique legal treatment allowed cities to fund monorail projects using road development budgets, making them more economically feasible.

In 1974, the Japanese government launched the Monorail Road Development Project, which provided national subsidies for infrastructure such as pylons, guideways, and stations—classified as special roads (tokushu-gairo) under urban planning. The program later expanded to include automated guideway systems (AGT) and was renamed accordingly.

In 2010, the subsidy system was merged into the Comprehensive Social Infrastructure Development Grants, allowing support to extend beyond infrastructure to equipment, vehicles, substations, and more (except depot buildings).

Urban monorails today are typically built along roadways and must be integrated into urban plans, with three designations:

Special Roads (for structures like tracks and stations)
Access Roads (connected road infrastructure)
Urban Rapid Railways (functional designation for the transit system)

Monorail systems such as Tama Urban Monorail and Chiba Urban Monorail follow this law. Others, like Tokyo Monorail, were built before the law and are classified as railways due to their construction over rivers or private roads.

Overall, the Urban Monorail Law created a framework that combines transport policy, urban planning, and infrastructure finance, enabling modern monorail systems to develop effectively in Japan's cities.