「落葉するとき」「鳥のように」「天然の時間」【第19回邦楽器とともに④】 ー新作歌曲を揃えてー Modern Japanese Songs with Traditional
Автор: 日本歌曲協会
Загружено: 2025-07-02
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＜第19回邦楽器とともに ー新作歌曲を揃えてー＞より（動画）④
2024.10.21（月）東京文化会館・小ホール
映像制作 公益財団法人日本伝統文化振興財団
詩：柳瀬丈子
曲：寺嶋陸也
歌：福嶋勲（Ｂｒ）
箏：平田紀子
篠笛：藤舎武史
【解説】
柳瀬丈子さんの出版された最初の詩集である『やさしいメフィストフェレス』から３つの詩を選び、連作の歌曲集としました。
この詩集は、荒々しい野性味をもったいくつかの詩から始まるので、「メフィストフェレス」という詩集のタイトルとも相俟ってジェットコースターに乗っているようなダイナミックさに翻弄されるのですが、読み進めていくと次第に落ち着いた気分が支配的になり、生命の深みへと沈んでいくようになります。今回選んだ３篇は、いずれも詩集の終わり近くに載せられているものです。
篠笛や箏のような日本の楽器は音色だけで情景を描くことのできる楽器だと思いますが、この詩のような内省的な言葉と出会うことで、その音色が幾重にも複雑な光や闇、重さや軽さを持つように思います。さらにここでは、その言葉がバリトンの声によって発せられることで、どんな化学変化がおきるのか、それを楽しみにしながら作曲しました。 （曲 寺嶋 陸也）
「落葉するとき」
時に手離されて
色づいた銀杏の葉が
今 音もなく枝を離れる
梢から地面までの
黄金色の舞は
思ったよりもゆるやかで
みやびやかである
枯れ落ちる銀杏よ
お前は時満ちて土に還ることを
充分に納得している
同じように
やがて時満ちて
新しいお前らがいっせいに芽吹き
さらに時満ちて
濃い緑の息を四方に放つことを
識っている
ああ
天然の時間は貴く
無言の知恵は
みやびやかである
「鳥のように」
鳥のように
高貴なその日暮らしをしたいものだ
自然に抱かれ
自然が貯えたものを
必要なだけ食べ
自分は庫を持たず
翼の限り
空の碧さを呼吸し
ある日
力尽きて
大地に抱きとられる
財産目録は空白のままで
鳥のように優雅に
鳥のように身ひとつで
「天然の時間」
蚕が自分を紡ぐ密室を作るように
人間もさなぎになる時間が要るのだ
海に抱かれて
さなぎになりたい
小さな小さな殻に
わたしを封じて
広い広い海に
わたしを託したい
やさしい呼吸
やさしいうねり
やさしいつめたさ
やさしい沈黙
沈黙――
天然の時間の中で
さなぎのわたしは
孵ることを忘れてしまう
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