橘曙覧の『独楽吟』
Автор: 伊藤英伸
Загружено: 2019-12-24
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清貧の歌人として知られる橘曙覧(たちばなあけみ)の詠草52首『独楽吟』のなかで、共感を持てる18首を取り上げ、写真とBGMを添えてみました。
詳しくは>>
http://hiraizumi.info/essay.web/dokur...
BGMは甘茶の音楽工房さんの「夏色叙情」をお借りしました。
http://amachamusic.chagasi.com/
『独楽吟』52首
たのしみは草のいほりの筵敷きひとりこゝろを靜めをるとき
たのしみはすびつのもとにうち倒れゆすり起すも知らで寝し時
たのしみは珍しき書人にかり始め一ひらひろげたる時
たのしみは紙をひろげてとる筆の思ひの外に能くかけし時
たのしみは百日ひねれど成らぬ歌のふとおもしろく出きぬる時
たのしみは妻子むつまじくうちつどひ頭ならべて物をくふ時
たのしみは物をかゝせて善き價惜みげもなく人のくれし時
たのしみは空暖かにうち晴し春秋の日に出でありく時
たのしみは朝おきいでゝ昨日まで無りし花の咲ける見る時
たのしみは心にうかぶはかなごと思ひつゞけて煙草すふとき
たのしみは意にかなふ山水のあたりしづかに見てありくとき
たのしみは尋常ならぬ書に畫にうちひろげつゝ見もてゆく時
たのしみは常に見なれぬ鳥の來て軒遠からぬ樹に鳴しとき
たのしみはあき米櫃に米いでき今一月はよしといふとき
たのしみは物識人に稀にあひて古しへ今を語りあふとき
たのしみは門賣りありく魚買て煮る鐺の香を鼻に嗅ぐ時
たのしみはまれに魚煮て兒等皆がうましうましといひて食ふ時
たのしみはそゞろ讀ゆく書の中に我とひとしき人をみし時
たのしみは雪ふるよさり酒の糟あぶりて食て火にあたる時
たのしみは書よみ倦るをりしもあれ聲知る人の門たゝく時
たのしみは世に解がたくする書の心をひとりさとり得し時
たのしみは錢なくなりてわびをるに人の來りて錢くれし時
たのしみは炭さしすてゝおきし火の紅くなりきて湯の煮る時
たのしみは心をおかぬ友どちと笑ひかたりて腹をよるとき
たのしみは晝寝せしまに庭ぬらしふりたる雨をさめてしる時
たのしみは晝寝目ざむる枕べにことことと湯の煮てある時
たのしみは湯わかしわかし埋火を中にさし置て人とかたる時
たのしみはとぼしきまゝに人集め酒飲め物を食へといふ時
たのしみは客人えたる折しもあれ瓢に酒のありあへる時
たのしみは家内五人五たりが風だにひかでありあへる時
たのしみは機おりたてゝ新しきころもを縫て妻が着する時
たのしみは三人の兒どもすくすくと大きくなれる姿みる時
たのしみは人も訪ひこず事もなく心をいれて書を見る時
たのしみは明日物くるといふ占を咲くともし火の花にみる時
たのしみはたのむをよびて門あけて物もて來つる使えし時
たのしみは木芽煮して大きなる饅頭を一つほゝばりしとき
たのしみはつねに好める燒豆腐うまく煮たてゝ食せけるとき
たのしみは小豆の飯の冷たるを茶漬てふ物になしてくふ時
たのしみはいやなる人の來たりしが長くもをらでかへりけるとき
たのしみは田づらに行しわらは等が耒鍬とりて歸りくる時
たのしみは衾かづきて物がたりいひをるうちに寝入たるとき
たのしみはわらは墨するかたはらに筆の運びを思ひをる時
たのしみは好き筆をえて先水にひたしねぶりて試るとき
たのしみは庭にうゑたる春秋の花のさかりにあへる時々
たのしみはほしかりし物錢ぶくろうちかたぶけてかひえたるとき
たのしみは神の御國の民として神の敎をふかくおもふとき
たのしみは戎夷よろこぶ世の中に皇國忘れぬ人を見るとき
たのしみは鈴屋大人の後に生れその御諭をうくる思ふ時
たのしみは數ある書を辛くしてうつし竟つゝとぢて見るとき
たのしみは野寺山里日をくらしやどれといはれやどりけるとき
たのしみは野山のさとに人遇て我を見しりてあるじするとき
たのしみはふと見てほしくおもふ物辛くはかりて手にいれしとき
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