鰐淵晴子 / 死んでもいい

『らしゃめん』
1976


明治の文明開化の頃、らしゃめん(洋妾)とよばれた女達がいました……。 一人の女が、らしゃめんとなる悲運に始まり、その哀しみと生きざま、運命への抵抗とあきらめ――。女優・鰐淵晴子が演唱し、加藤和彦、井上忠夫、きくち寛ら豪華メンバーの筆による、妖気に溢れた哀切のロマン…ドラマチックなニュー・ミュージックの世界。



死んでもいい・・・・・鰐淵晴子

（作词杉紀彦，作曲佐藤健，编曲石川鷹彦）

長い間……眠れなかった様でございます。
らしゃめん馬車にのってから、ずいぶん長い間。
でも、今は海の上で、つかれ果てて……。

眠れるでしょう　今なら
夜が終り朝が来て
朝が終りまた夜が来て
星をみている今なら。
海の上にいることも忘れた
おわれて逃げたことも忘れた
私がだれなのか
あなたがだれなのか　みんな忘れた
ねむれるでしょう　今なら。

漁火（いさりび）がゆれています。
あれは下田（しもだ）でございましょうか。
寒くはございません。
冬なのでございましょうか。

夢をみているようです
静かすぎる夜の海
このままで死んでもいいと
夢をみているようです。
数え切れぬ思い出も忘れた
こころのいたむ事も忘れた
私の名前さえ
あなたの名前さえ　みんな忘れた
眠れるでしょう　今なら。