転生してもあたしだった件 | 雪ノ下佐助

#転生 #オリジナル曲
全部、全部投げ出してやり直せたら。
何もかも上手くいかない今を変えられたなら。

全部失敗した。
なにもかも投げ出して、リセットしてしまいたい。
神様が間違えて、異世界にでも飛ばしてくれないだろうか。
そして、お詫びにチート能力をください。

力さえあれば…
力があれば…
力があったとして…どうなる？

私の失敗の原因は私の心のありようだ。
いざという時に動けない。
相手に合わせて話すことができない。
どうすればいいかわからない。

たとえば転生して、チート能力が与えられたとして。
私はいきなりその怯えを踏み越えていけるだろうか。
私は私を信用していない。

散歩中の犬が駆け寄ってくる。いつもの時間、いつもの子。
飼い主のおばあさんに挨拶する。
引きこもりから抜け出すのに１年。
散歩が日課になるまでもう１年。
その間ずっとすれ違っていたおばあさんに挨拶ができるようになるまでさらに半年。
声がちゃんと出るようになるのにあと何年？
全部投げ出してやり直したら。
数少ない私が築いてきた関係性がゼロになる。

私は他の人の十倍の労力をかけて、百分の一のものをやっと築いてきた。
全部投げ出しても、きっと同じように怯えて、同じように少しずつしか変われない。
私は私のどうしようもなさだけは信じられる。

きっと、転生しても私は私なのだ。
いきなり変わるなんて、私は信じない。
でも、ゆっくりと変わっていくのならばどうだろう？
半歩踏み出すのに１年。
もう半歩踏み出すのに１年。
さらに一歩、もう半年。
次の一歩にあと何年？

私にお似合いの遅さだ。
そうであれば、信じられる。
この歩みは私が自分で歩いた結果だと。

私は私のどうしようもなさだけは信じられる。


全部、全部投げ出してやり直しても
何もかも上手くいかない私を変えられないなら、
今までなんとか歩いてきた道の続きを、もう少しだけ歩いてみようと思う。


いつか歩けなくなったら振り返ってみよう、案外、遠くまで来ているかもしれない。