【シニア恋愛】団地住まい68歳の出会い。猫のように、そっと寄り添うあなた。セカンドライフ

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68歳、沢田絹。
夫を見送り、ひとりきりとなった団地の一室に、
ある日そっと現れたのは、一匹の三毛猫だった。

名もなき静けさを埋めるように、
その猫は彼女の暮らしに溶け込み、
やがて絹の心に忘れていた
「誰かのためのぬくもり」を呼び戻していく。

編み物のリズムにしっぽを揺らし、
窓辺で目を細めるミケ。
その柔らかな毛並みが、
長く閉ざされていた絹の記憶にそっと火をともす。

――そして、ある日。

ミケの導くような足取りに誘われて、
絹が出会ったのは、70歳の陽介という名の男だった。

穏やかな声、優しい眼差し。
猫のぬくもりの奥にいたその人は、
まるで過去と未来の間を繋ぐ鍵のように、
静かに絹の世界へ入り込んでくる。

「うまいなあ、こういうの、久しぶりだよ」

和菓子を口にした陽介のその一言に、
絹の心がほぐれていく。
けれどその優しさに、
まだ心の奥底では戸惑いも残っていて――。

ひとりきりの部屋に舞い戻った夜、
絹はふと問いかける。
「私は、まだ誰かを待ってもいいのだろうか」

ミケは黙って足元に寄り添い、
いつものようにまぶたを閉じる。
けれどその小さな背に、絹は確かに感じた。

人生の春は一度きりじゃない。
何度だって、訪れていいのだと。

#団地 #セカンドライフ #シニア恋愛

VOICEVOX： Nemo

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