NTT緊急買うべき銘柄へ経済対策が後押しする理由

NTTの最新の取り組みと、それが政府の「強い経済」を実現するための総合経済対策とどのように結びついているかについて、決算資料、技術連携、および国策の観点から網羅的に要約します。
1. 「強い経済」総合経済対策におけるNTTの国策的役割
日本政府が長年のデフレから脱却し、「成長型経済」への移行を目指すために閣議決定した**「強い経済」を実現する総合経済対策において、NTTの技術開発は経済安全保障の強化**という最重要戦略に位置づけられています。
• 戦略分野への注力： 経済対策では、AI・半導体に続き、量子や光電融合技術を含むオール光ネットワーク技術などの先端技術が、経済安全保障上重要な分野として名指しされており、我が国主導で開発・社会実装・海外展開を目指すことが明記されています。
• 財務的裏付け： 政府は、民間投資を引き出すために複数年度の予算措置を用いることや、投資促進につながる税制措置を検討することで、投資の予見可能性を高める方針です。これは、NTTが推進するIOWNのような長期・巨額投資に対して、国が強力に支援する姿勢を示しています。
2. コア事業の先行投資と財務状況（2025年4月～9月期）
NTTの2025年度第2四半期（4月～9月）の連結決算では、営業収益が6兆 7,727億円（対前年比 +2.8%）で過去最高を更新し、当期利益（純利益）は5,957億円（対前年比 +7.4%）と増益でした。
• 増益要因： この増益を牽引したのはグローバル・ソリューション事業の営業利益増益（+1,200億円）で、主因は子会社NTTデータグループがデータセンター（DC）資産をREITへ譲渡したことによる1,295億円の譲渡益の計上です。
• 減益要因（戦略的コスト）： 一方、中核である総合ICT事業は786億円の減益要因となりました。これは主に、NTTドコモが競争激化に対応するため、顧客獲得に向けた販促費や通信品質向上のための基地局増設にコストを先行させているためであり、島田社長はこれを「正念場」と表現しています。
• 成長投資の加速： NTTデータグループは、DC譲渡で得られた資金を、AI（「tsuzumi 2」など）やNext-Gen Infrastructure（次世代インフラ）キャッシュ・リサイクル戦略を推進しており、政府が求める成長投資を体現しています。
3. 光技術を核とした二大イノベーションの進捗
NTTは、光技術を基盤としたIOWNと量子コンピューティングの二つの領域で、日本の技術的優位性を確立する取り組みを加速しています。
① 光量子コンピューター（計算資源の国産化）
NTTは2025年11月18日、東大発スタートアップのOptQC（2024年設立、東京大学大学院工学系研究科の研究成果が基盤）と連携協定を締結し、2030年までに光量子コンピューターの実用化を目指すと発表しました。
• 光方式の優位性： 情報処理に電気ではなく光の粒（量子）を使う新方式を採用することで、冷却装置が不要な室温での動作が可能となり、小型・省電力化を実現できます。これは、生成AI（人工知能）の活用で増えるデータセンターの電力需要の抑制にもつながると期待されています。
• 社会貢献と検討時期： 量子コンピューターは、スーパーコンピューターで数億年かかる計算を数分で実行できる可能性を持ち、大都市の交通最適化や創薬など社会経済に莫大な利益をもたらすと期待されます。島田社長は、2028年ごろから活用事例の検討を開始するとしています。
② IOWN（通信インフラの革新と距離制約の解消）
NTTは、約60年間続けてきた光技術の研究知見を活かし、次世代通信規格IOWN（Innovative Optical and Wireless Network）の実現に注力しています。
• APNによるデータプラットフォーム実証： NTT東日本を含むNTTグループは、ブロードバンドタワー（コード：3776）と連携し、IOWNの中核技術**APN（All-Photonics Network）**を活用した共同実証を2025年11月17日より開始しました。
• 距離的制約の克服： この実証は、1,000kmを超える距離を隔てたデータセンター間で、APNを適用したストレージシステムを運用し、物理的に離れた場所に設置されたストレージを一つのシステムのように運用可能とすることで、データ配置の地理的制約を克服することを目指しています。
• ユースケースと展開： IOWN技術は、大阪・関西万博（10月13日に閉幕）で「超歌舞伎」などの多様なユースケース実証に活用され、そのノウハウは今後の新たな価値創造とビジネス展開に繋げられます。また、香港の金融業界向けに約50km離れたDCを接続する商用提供が実現するなど、海外展開も進んでいます。
③その他の成長分野
• モビリティ事業： 自動運転事業を推進する**「NTTモビリティ株式会社」が2025年12月**に設立される予定です。これは、NTTグループの知見・技術を集約し、安心・安全な自動運転社会の実現を目指すものです。
• AI戦略： 高性能・高セキュア・低コストな純国産LLM「tsuzumi 2」学習回数を制御する独自のアプローチを取り、コンプライアンスを重視する大企業や官公庁向けの**「クリーンなAI」**としての地位確立を目指しています。
• 金融DX： 住信SBIネット銀行の参画に伴い、**「d NEOBANK」を開始するなど、金融・決済領域の強化を進めています。この戦略は、「日本版SoFi」**を目指すものと分析されています