保存か？撤去か？　戦争伝える「コンクリート船」　防波堤として利用も劣化進む　広島

太平洋戦争中に建造され、長年港の安全を守ってきた特殊な「船」が呉市に現存します。
与えられた使命を全うしたのか、それとも使用継続か…今後の行く末をツイセキしました。

【五十川記者】
「昔ながらのこじんまりとした漁港にやってきました。少し変わったコンクリートを使った防波堤がありまして少し左側の部分、丸みを帯びています。船のような形をしているのが分かるでしょうか」

「船」の形をした全長１０メートルほどの異様な防波堤…戦時中につくられた「コンクリート船」です。
上空から見ると名残はくっきり！
呉市音戸町でかつての姿をとどめたまま、現役の「船」たちを波風から守ってきました。
ところが…

【五十川記者】
「近づくと、丸くなっていますが船の船首だった部分がよくわかります。大人１人が通れるかなという感じですけどちょっと気をつけてください。この真ん中の部分、甲板だったと思われる部分が大きく崩落しているのが分かります。ここが直近まで現役で使われていたということでもし万が一、人が落ちていたらと思うと、ぞっとします」

去年１１月、甲板だった部分が突如大きく崩れ落ちてしまったのです。

【防波堤前で半世紀以上経営 吉村石油・吉村和美さん】
「台風のとき波があの家を越えて来る。ここは（コンクリート船の防波堤で）そういう心配がない。（壊れた瞬間）音がバーンと言ったものだから、あれ？何？と思ったら波しぶきがあがった」

戦後７９年。
数年前からコンクリートが劣化したびたび破損が目立つようになりました。
漁港を管理する県は今回、コンクリート船だった部分の立ち入り禁止？を決めました。
周辺のカキ生産者などが船を係留していましたが、別の場所への「避難」を余儀なくされました。

【防波堤に船係留 海田水産・海田歳己さん】
「新しいのを作ってほしいですね」
Q：理由は？
「今のこのままだと乗ったり下りたりも潮の影響で難しい。歩くのが怖い」

終戦間際に開発され別の船に引っ張ってもらう「曳航船」として燃料を運んでいたとみられるコンクリート船。
深刻な鉄鋼不足に陥っていた状況が伺える貴重な「戦争遺構」でもあります。
戦後、行き場がなかったところをまさに「渡りに舟」で地元の人たちが有効活用してきましたが、経緯も知らない人が多くなり文化的価値になかなかスポットが当たらない状況が続いてきました。

【安浦町まちづくり協議会・山田賢一会長】
「はいどうぞ」

３０キロほど東に離れた呉市安浦町にも戦時中のコンクリート船が２隻、防波堤として残っています。

【安浦町まちづくり協議会山田賢一会長】
「普通、もっとボロボロになるはずなんですけど、そんなに劣化がしていないんですよね」

船自体の原型は音戸町に比べしっかりと残っていますが、安全上の観点などから日頃は立ち入りが制限されています。

【安浦町まちづくり協議会・山田賢一会長】
「コンクリートで船を作らないといけないという非常に悲惨な戦争をやったもんだということで戦争はいけないとみんなに伝えていきたい」

戦争の記憶を後世に伝える遺構でありながら、保護するためのルールもがなく野ざらしのコンクリート船。
今回、壊れた音戸町側の管理をする県は、準備ができ次第、元に近いかたちで甲板部分を「仮復旧」をしたい考えですが、今後も「防波堤」として使い続けるか決まっていません。 ＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
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