塩田鉄人

人生の途中で、「このままでは終われない」と思う瞬間があった。
そこから大学の通信課程で経済学の学び直しを始めた40代、会社員。

誰に語れるような劇的な出来事があったわけじゃない。
働きながら難関大学を卒業することで自分に自信を持ちたいと思っただけ。

休日は大学応援団の演舞を観に行くことが多い。
そこにある眩しい青春や、未来に向けて伸びていく気配に圧倒され、
涙が出たり、嫉妬したり、励まされたりする。
若い彼らを見ていると、「自分もやらなければ」と思える。

本は毎日読む。
村上春樹作品と出会ってから、自己について考える時間が増えた。
考えすぎる日は、だいたい小説や随筆を書いては気晴らししている。
小さくて静かな行為だが、そういう積み重ねが自分を変えていく。

タバコは吸わない。酒は弱い。ギャンブルにも向いていない。
だからといって、特別まっとうな人間というわけでもない。むしろ、まるでダメなオッサン…略してマダオだ。

結婚は一度、離婚も一度。
その経験値が「2」なのか「0」なのかはまだ分からない。
うまくいくことも、いかないことも、そのまま抱えてきた。
おそらく、この先も不器用なままだろう。

誰かと話して、少し笑ったり、同じ方向を見て沈黙を共用できたり、そんなささやかな時間があればいいなと思う。

無理に飾るとピントのずれた写真みたいにぼやけて、お互い長続きしない。
だから、なるべくそのままでいたいし、相手にもそうであってほしい。

本音で言葉を交わせる人なら、"年齢"や"関係の形"にはこだわらない。

一緒に過ごす時間に、きちんと意味があれば、それで十分だ。