地政学の論理001:病理現象としての地政学
Автор: 前野佳彦
Загружено: 2026-01-09
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#ベネズエラ侵攻
超大国アメリカが、「ほしいもの(石油)を手に入れる」ために、一切の口実なしに、その突出した軍事力を行使するということは、十年前なら悪い冗談か、妄想にすぎないと一笑されたでしょう。しかしそれはちょうど今(2026年1月4日)、現実の事件として、一国の大統領の誘拐、拉致、そしてアメリカ国内での「裁判」という形で一気に顕在化しました。これはもちろんすべての国際法、そして国内的法治(立憲的法治)を否定し、破壊する行為です。それに対する批判、非難の論拠は、容易という以上に、唖然とするほど自明の常識ですが、さらにこの背景で動いてきた、〈地政学の論理〉とその系譜性に着目する必要があります。要点をまとめてみましょう。
① 今回の事件で顕在化した〈大国のエゴイズム〉は、それ自体長い系譜性を持つものです。第二次大戦後のグローバリズムに限っても、その内実を通観すれば、そこにはつねに主導国家アメリカの「潜在的利権」がからみ、それが定向的に肥大化していくという構図が見られました。UNと国際法は反比例的に弱化していき、「国連軍」は地政学的な装飾に過ぎなくなり、地域紛争は拡大の一途をたどっています。
② しかし潜勢的な利権主義と、顕在的な覇権主義はやはり大きな差異があります。その露骨な自己顕示が今回の事件の中核部であるならば、それはそうした暴挙に対抗すべき国民国家の国際法共同体の弱化が、ある閾域を超えたこと、大国がもはや中小国家の規範とルールにまったく顧慮しなくなったという、新しい政経の現実を突きつけます。
③ この流れを始めたのは中国です。チベットと内蒙古、ウイグルの併呑はすべて「国防上の要衝」という一事で統括される、拡張主義の産物でした。
④ 次にソ連―ロシアです。帝政ロシアから始まった帝国主義的拡張は、ソ連によってイデオロギー的な構造を与えられ、「多民族的に」肥大します。そしてそれがひとまず解体した後も、プーチン体制が掲げる〈大ロシア主義〉によって併呑政策は続けられました。その最悪の結果が、2022年2月以来のウクライナ戦争で、それはいまだに続いています。
⑤ この間、アメリカが保持していたオプションは明白でした。法治と国際法の側に立って、自らが主導して構築した戦後体制、グローバリズムと同盟的安全保障と、民主制度を(いかに不完全であれ)擁護するという立場を堅持するならば、この難しい時代を切り抜ける大きなハブとなりえたでしょう。しかし様々な内政、外政の力学がトランプ体制を生み、いまその負の系譜は、法治と国際法の完全否定となって、これ以上ないほどのどぎつさで顕在化しました。
⑥ 短期的には、この流れは昨年の二つの大事件、NATOの大崩壊と、トランプ関税という名の〈ショバ代〉の徴収から始まっています。そしてまた短期的には、グリーンランド以下のターゲットが早速設定されました。この流れは今後カスケード的に拡大していくことが予想されます。
⑦ 外政はつねに内政と連動しています。この場合もそうで、特にベネズエラ事件のタイミングは、国内でのトランプ政権の末期的機能不全(二つの大きな訴訟の敗色、支持率の定向的低下、中間選挙への見通しのなさ)とはっきりと連動していました。それは内政の崩壊と、外政軍事面での得点かせぎの〈速さ比べ〉のような、パニック的様相を呈しています。
⑧ こうした非常時において(それは実際にもう非常時ですから)、法治と民主主義の側に立つわれわれは、どう対処すべきでしょうか。どうわれわれの理性と合理的判断を働かせるべきでしょうか。
対処法は二つだと思います。
⑨ まず最重要なことは、足元の法治の状況を冷静に精査し、そしてそれを強化することです。〈地政学〉的利害関係の設定は、法治と真っ向から衝突する原理であり、それはまた強い感染力を持ちます。したがって自衛の第一歩は法治体制の強化と感染の防止に尽きます。
⑩ 強化は内政面と外政面に分岐します。内政面での地政学的言説の批判的排除がまず重要です(向こうがやるならこちらもやらねば、といった短絡)。外政面では特に、〈法治国家相互の連携〉が大きな鍵になります。この方向では、安全保障上の連携、その新しい基軸の開発が不可欠です。〈シーレーン〉防衛をめぐる、新型護衛艦の輸出は、オーストラリア、ニュージーランドとの安全保障面での連携を生みました。それは非常にポジティブな成果です。しかしすべての連携は、法治と国際法尊重の枠内で行われる必要があり、常にチェックを怠らないことが必須です。もしここにも〈地政学〉の論理が顔を出すならば、その価値の正負は逆転します。
⑪ 次に重要なことは、〈相手〉を知ることです。つまり覇権主義から帝国主義、そして最終的に全体主義に傾斜する三大国において、その〈論理〉と、〈内部状況〉を把握することです。
⑫ まず内部状況ですが、すべての専制体制は必ず内部に抑圧体制を構築し、それに包含された普通の人々は、端的に被害者です。そしてこの被害の程度に応じて、反発が生じ、組織化の可能性が生じます。組織化は最終的には法治の再建に向かいます。これは論理的必然です。
⑬ この過程のすべてを客観的に精査し、査定する必要があります。この専制体制内部の法治再建の要因が、これからの一つの外政、外交の基軸にならねばなりません。それは戦後体制にはほとんど存在しなかった、新しい、しかし必須の基軸です。
⑭ 三大国に即して言えば、法治的制度の残滓は、アメリカにおいてまだ部分的に機能しており、アメリカの民主的伝統をコアとする〈アメリカン・リベラリズム〉は、まだ実際に活動し、限定的に機能しています。この実勢力との様々な連携は可能であり、これからのわたしたちの大きな課題です。ロシア、中国へと眼を転ずると、この度合いは低下し、表面的には〈沈黙の集団〉と化す局面が多くなります。しかし最近のあの〈白紙革命〉のような突発的な事件に透けて見える、普通人の抑圧への大きな不満、潜在的な組織化の能力というものを見逃してはならないと思います。
⑮ 法治国家であるわれわれは、積極的に彼らとコンタクトを保ち、勇気を与え、組織化への可能性を助けるべきです(亡命政府の樹立がその一つの極限です)。これは当然、これまでの法治国家の一般的な〈穏健的外政〉からは分岐しますが、すでに安倍外交が、ウイグル支援を含意した組織化に動いた時(2012年頃)、この方向性は含意されていたことを今一度想起すべきです(この面でも、安倍首相は先駆者であり、先見の明に富んだ外交の天才でした)。
⑯ これからは、〈非常時〉が内政においても、外政においても続きます。その認識を基本に、〈非常時的対応〉をとるならば、専制国家が好む〈内政干渉〉という口実を無視して、その専制体制内部の被抑圧者(普通人)の補助、保護に向かうべき時です。
次に〈地政学に内在する論理〉の要点を概観します。
⑰ 覇権主義から帝国主義、そして全体主義への傾斜は、十九世紀後半から二十世紀前半まで、およそ百年間の〈無法恫喝外交時代〉の基調でした。〈無法〉というのは、〈国際法の機能不全〉と同義です。それが内政に反響すると、体制内部での専制体質が増長し、結局は立憲体制と法治の破壊へ至ります。戦前の日本の憲政がたどった受難史が、その一つの典型でした。この時代を動かした原理はやはり、端的に言って〈地政学〉そのものです。
⑱ したがって帝国主義的併呑と〈影響圏〉の構築に邁進し始めた三大国を動かす構造的動因もまた、先祖返り的に蘇った〈地政学〉に他なりません。
⑲ しかしそこには、まったく新しい要因も付加されています。それは、1.〈核の時代〉における覇権主義であるということ、そして次に、2.IT、AIとの合体による〈超絶監視社会〉の実現です。この二つのモメントは、全体的に解析され、その〈地政学〉的連関が把握され、解体の可能性が探られなければなりません。
⑳ 法治の側に立つわれわれも、この相手方の運動原理、その〈地政学〉に内在する〈論理〉を把握する必要があります。これはこれからのわれわれの国際関係における規準にならざるを得ず、感情論を超えた冷静な指針の構築には不可欠だからです。
㉑ しかしそれはもちろん、われわれも〈地政学〉の論理によって動くということではありません。それとはまったく逆側に、立憲と法治は設定されているからです。
㉒ 言うまでもないことですが、われわれ自身が〈地政学〉的発想をして行動を起こすならば、必然的にわれわれの日常を支えている法治そのものが破壊されます。これもまた実際に、戦前の〈闇の十年〉(1935~45年)で現実に起こった、大きな趨勢でした。そうではなく、あくまで法治に則りながら、なおかつ〈地政学〉的発想という病理現象の(それはマクロの文明病理そのものですから)、内在的構造原理を把握する必要があるのです。
㉓ 〈地政学〉は、一言で総括すれば、〈歪んだ合理主義のイデオロギー構造体〉です。もともと近代的合理主義に内包されていた、いくつかのモメントが、ちょうど細胞の論理から逸脱する癌細胞のように、偏差しつつ増殖したものだとイメージすることができます。
㉔ たとえば、〈生存〉と〈資源〉の連結がそれにあたります。
㉕ これは近代的合理主義の核心部で起こった定位事象でした(デカルトの『方法叙説』がその祖型の一つです)。しかし〈地政学〉は、この連結を、〈適者生存〉と、〈われわれの生存に必要なわれわれの資源)〉へと偏差させます。こうして正常な資源活用、生活世界の構築が偏差し、強権の管理する〈最適の資源活用〉の描像を生むことになります。それは一見合理主義的に見える、しかし非理性的なプロパガンダに彩られた、利権のエゴイズムであり、病理現象的特権階級の形成へと連続します。
㉖ こうしたマクロの病理現象は、19世紀後半から20世紀前半の〈闇の百年〉において、すでに十分すぎるほどの資料基体を備えています(がしかし、十分に整理されたとは言い難い状況でもあります)。
㉗ こうした地政学の内在的論理を、再度、法治国家の側も、精査し、学びなおす必要があります。その教材は、眼前で展開し始めた、〈地政学の病理〉そのものです。身体上の病理現象に一つの構造性、その意味で一貫した論理性が見られるように、三大国において顕在化している地政学的欲望の奔出にもまた、病理そのものとしての構造性、論理性を備えています。その病根と、拡大の原理を知ることが、抑止と治癒への第一歩です。
㉘ これも一つの〈速度の勝負〉かもしれません。〈地政学〉の蔓延と、それへの感染を避けるために、次々とこれから生起するはずの地政学的病理の一つ一つの内部構造を剔抉し、可能な時は〈処方〉を解明すること、これがこの非常時において、理性的主体が果たすべき責務であると考えます。
だいたい以上のようになるかと思います。もちろんこれは概観であり、ラフ・スケッチにすぎませから、その内実の解明はこれから生起する一つ一つの事象に即して行い続ける必要があります。
ともれこれが、わたしたちの現在地です。わたしも微力ながら、〈地政学の論理〉シリーズの展開において、この必要不可欠の作業に参加してみるつもりです。
2026年1月7日
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〈NATO大崩壊と日米安保の将来〉
〈トランプ関税とアノクラシーの暴走〉
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