私はカメラの前で、今夜も壊れ、乱れる...【朗読・小説】

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【作品名】
私はカメラの前で、今夜も壊れ、乱れる...【朗読・小説】

【ストーリー】
私はゆい、52歳。これから話すのは、私とまさしの25年間の結婚生活の物語。正直、こんな赤裸々な話を誰かにするなんて思ってもいなかったけれど、恥ずかしいけれど、全部話してみようと思います。まさしと出会ったのは27歳の春だった。私は中堅商社の営業事務として働いていて、

まさしは同じフロアの営業部に配属されてきた中途入社の社員だった。初めて見た時の印象は「なんて子供っぽい人なんだろう」だった。朝礼中なのにペンをくるくる回していたり、昼休みになると真っ先に携帯ゲームを取り出したり、デスクの引き出しにはお菓子がぎっしり詰まっていたり。

30歳という年齢を聞いて驚いた。とてもそんな歳には見えなかった。童顔で、いつもニコニコしていて、まるで大学生のようだった。「新入りのまさしさん、ちょっと変わってるよね」同僚たちはそう噂していた。確かに変わっていた。会議中に居眠りをして上司に怒られたり、

締切を忘れて慌てたり、お昼ご飯を食べ忘れてお腹を鳴らしていたり。でも、そんなまさしの違う一面を見たのは、入社して2ヶ月ほど経った頃だった。その日、私は大きなミスをしてしまった。重要な契約書の数字を間違えて入力してしまい、それに気づいたのは先方に送った後。

青ざめている私を見て、まさしが声をかけてきた。「ゆいさん、どうしたの？顔色悪いよ」「実は...契約書の金額を一桁間違えてしまって」「えっ、それはまずいね。どれ、見せて」まさしは素早く内容を確認すると、すぐに行動を起こした。先方の担当者の連絡先を調べ、電話をかけ始めた。

「お世話になっております。営業部のまさしと申します。実は先ほどお送りした契約書の件でご連絡を...」驚くほど落ち着いた口調で、そして巧みな話術で、こちらのミスを相手に不快感を与えることなく説明していった。「大変申し訳ございません。こちらの手違いで数字に誤りがございました。

すぐに訂正版をお送りさせていただきますが、もし可能でしたら、先ほどの書類は破棄していただけますでしょうか」電話を切った後、まさしは私に向かって微笑んだ。「大丈夫、向こうも理解してくれたよ。訂正版を今から作って、俺が直接届けに行くから「でも、それはまさしさんの仕事じゃ...」

「いいんだよ。ゆいさん、震えてるじゃん。誰にでもミスはあるから、気にしないで」その優しい笑顔と行動力に、初めて胸がときめいた。それから、まさしのことをよく観察するようになった。子供っぽいと思っていたけれど、実はとても優しい人だということが分かってきた。

残業で遅くなった女性社員がいれば「一人で帰るの危ないから」と駅まで送っていったり、体調が悪そうな人がいれば薬を買ってきてそっとデスクに置いたり、新人が困っていれば丁寧に教えたり「ゆいさん、今日も残業？」ある夜、私が一人で残業していると、まさしが声をかけてきた。

「月末だから仕方ないの」「じゃあ、俺も残るよ。一人じゃつまらないでしょ」「でも、まさしさんの仕事は終わってるんじゃ...」「いいの、いいの。それより、コーヒーでも飲む？」そう言って、自動販売機で買ってきたコーヒーを差し出してくれた。温かいコーヒーと、まさしの優しさが心に染みた。

それから度々、まさしは私の残業に付き合ってくれるようになった。仕事を手伝ってくれたり、ただ隣にいてくれたり。会話をしながら、まさしの人となりを知っていった。「まさしさんって、どうしてこの会社に？」「前の会社が倒産しちゃって。でも、今思えばよかったかも。ゆいさんに会えたし」

さらっと言われた言葉にドキッとした「冗談ばっかり」「冗談じゃないよ。ゆいさんといると楽しい」ある雨の日のことだった。私が傘を忘れて困っていると、まさしが自分の傘を差し出してきた。「ゆいさん、これ使って」「でも、まさしさんは？」「俺は走って帰るから大丈夫！若いから！」

「30歳でしょ、若くないじゃない」「ゆいさんだって27歳でしょ、一緒だよ」結局、二人で一つの傘に入って駅まで歩いた。肩が触れ合う距離で、まさしの体温を感じながら歩いた道のり。雨音と、二人の足音と、時々聞こえるまさしの鼻歌。「まさしさん、鼻歌なんて歌って」

「あ、ごめん。癖なんだ。楽しいとつい」「楽しいの？」「うん、ゆいさんと一緒だから」駅に着いて、改札の前で、まさしが急に真剣な顔になった。「ゆいさん、実は前から聞きたかったんだけど」「なに？」「彼氏とか、いるの？」「いないけど」「本当？じゃあ、今度の休み、一緒に出かけない？」

心臓が大きく跳ねた。まさかまさしさんから誘われるなんて。「いいよ」自分でも驚くほど、素直に答えていた。最初のデートは遊園地だった。待ち合わせ場所に現れたまさしは、普段のスーツ姿とは違って、ジーンズにTシャツというラフな格好だった。「ゆいさん、今日は可愛いね」



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