焼失前の首里城（2015年4月撮影）　Shurijo Castle

首里城（しゅりじょう、沖縄方言: スイグシク）は、琉球王国中山首里（現：沖縄県那覇市）にあり、かつて海外貿易の拠点であった那覇港を見下ろす丘陵地にあったグスク（御城）の城趾です。現在は国営沖縄記念公園の首里城地区（通称・首里城公園）として都市公園となっています。
　首里城は琉球王朝の王城で、沖縄県内最大規模の城でした。戦前は沖縄神社社殿としての正殿などが旧国宝に指定されていましたが、1945（昭和20）年の沖縄戦と戦後の琉球大学建設によりほぼ完全に破壊され、わずかに城壁や建物の基礎などの一部が残っている状態でした。1980年代前半の琉球大学の西原町への移転にともない、本格的な復元は1980年代末から行われ、1992（平成4）年に、正殿などが旧来の遺構を埋め戻す形で復元されました。1993（平成5）年に放送されたNHK大河ドラマ「琉球の風」の舞台となりました。1999（平成11）年には都市景観100選を受賞。その後2000（平成12）年12月、「琉球王国のグスク及び関連遺産群」として世界遺産に登録されましたが、登録は「首里城跡（しゅりじょうあと）」であり、復元された建物や城壁は世界遺産に含まれていません。2019（令和元）年10月31日の深夜の火災により、正殿を始めとする多くの復元建築と収蔵・展示されていた工芸品が全焼・焼失または焼損しました。
　首里城の創建年代は明らかではありません。尚氏歴代居城の正殿は、かつて百浦添（ムンダシー）と呼ばれ、敬称では御百浦添（ウムンダシー）と称されました。近年の発掘調査から最古の遺構は14世紀末のものと推定され、三山時代には中山の城として用いられていたことが確認されています。おそらく、13世紀末から14世紀のグスク造営期に他の沖縄の多くの城同様に成立したものと考えらています。
　尚巴志が三山を統一し琉球王朝を立てると、首里城を王家の居城として用いるようになりました。同時に首里は首府として栄え、第二尚氏においても同様でした。史書に記録されている限りでも、首里城は数度にわたり焼失しています。焼失の度に再建されてきましたが、良材が不足しがちな沖縄では木材の調達が問題となり、薩摩藩からの木材提供で再建を行ったり、将来の木材需要を見越して本島北部での植林事業を行ったりしています。一度目の焼失は1453（享徳2）年に第一尚氏の尚金福王の死去後に発生した王位争い（志魯・布里の乱）であり、城内は完全に破壊されました。一度目に再建された城の外観と構造については、『李朝実録』に記述がみられ、1456年2月の目撃記録として、首里城は、「外城」「中城」「内城」の三地区に分かれ、外城には倉庫や厩、中城には200余人の警備兵、内城には二層の屋根を持つ「閣」があり、内部は三階建てで、三階は宝物を保管し、中層には王が滞在する場所があり、侍女が100余人控え、一階は酒食が供される集会所となっていたと記述されています。
　二度目の焼失は1660（万治3）年のことであり再建に11年の年月を要しました。1709（宝永6）年には三度目の火災が起き正殿・北殿・南殿などが焼失しました。この時は財政が逼迫しており、1712（正徳2）年に薩摩藩から2万本近い原木を提供されました。現代の首里城の建築は、三度目の火災の後再建された1715（正徳5）年から1945（昭和20）年までの姿を基にしています。なお、1712（正徳2）年発行の「和漢三才図会」（寺島良安・編）には首里城が「琉球国」の項の挿絵（地図）のなかに描かれています。また1719年冊封副使・徐葆光『冊封琉球全図』の「中秋宴図」に首里城が描かれています。
　1879（明治12）年の沖縄県設置に至る琉球処分以後は、正殿など首里城の建物は政府の所在地としての役割を喪失し、日本陸軍の第6師団（熊本）の軍営として、その後は首里区（後の首里市）に払い下げられ、沖縄県立首里高等女学校の校舎として利用されました。
　1912年に小学校が建てられた後、首里城は老朽化が激しく正殿の取り壊しも検討されました。しかし、沖縄の文化調査を行っていた東京帝国大学教授伊東忠太、鎌倉芳太郎ら関係者の奔走により取り壊しは中止となり、1897年制定の古社寺保存法の対象になるよう、正殿の背後に沖縄神社を建立し、正殿を神社の拝殿と位置付けることで国の予算で修復できるよう取りはからいました。1929年に国宝保存法が制定されると国宝に指定されて国が保存・管理することとなりました。正殿は県社沖縄神社の社殿となり源為朝と歴代国王が祀られました。
　正殿は1925（大正14）年に特別保護建造物（のち旧国宝）に指定されました（指定名称は「沖縄神社拝殿」）。昭和初期（1927（昭和2）年～1932（昭和7）年）に正殿の改修工事が行われました。
　太平洋戦争中の沖縄戦において日本軍が首里城の下に地下壕を掘り陸軍第32軍総司令部を置いたこともあり、1945（昭和20）年5月25日から3日間に渡りアメリカ軍艦ミシシッピなどから砲撃を受け、27日に焼失したとされています（今も、龍潭池には、地下壕の入り口や弾痕などが確認できます。また、第32軍司令部壕は首里城地下に現存しますが陥没のおそれなどにより公開は困難というのが県の見解です）。さらに日米両軍の激しい戦闘で、首里城やその城下の町並み、琉球王国の宝物・文書を含む多くの文化財が破壊されました。5月27日の日本軍南部撤退の際には、歩行不能の重傷兵約5000名が首里城の地下陣地で自決しました。宝物庫は奇跡的に戦災を免れましたが、中の財宝は全て米軍に略奪されました。戦後一部が返還され、また所在が明らかになり返還に向け交渉中のものもあります。また近年尚家が保有していた琉球王国関連の品が寄贈され、沖縄県立博物館・美術館などで保管・展示されています。
　戦後は首里城跡に琉球大学が置かれ、多くの遺構が撤去あるいは埋められましたが、　　　首里城の再建は戦後間もなくから多くの人々の悲願でした。
　1958（昭和33）年、守礼門が再建されたのを皮切りに円覚寺門など周辺の建築から再建が始まりました。1972（昭和47）年、日本復帰後に国の史跡に指定され、城の入り口に当たる歓会門と周囲の城郭が再建されました。1979（昭和54）年に琉球大学が首里城跡から移転すると1980年代に県および国による首里城再建計画が策定され、本格的な復元がはじまりました。1989（平成元）年11月より、遺構の発掘調査や昭和初期の正殿改修図面・写真資料、古老の記憶などを元に、工芸家や職人を動員した当時の装飾・建築技術の復元作業が行われて正殿他の再建が始まりました。屋根瓦については色についてさえ記録がなく、当時を知る老人を集めて話を聞いても赤～黒まで意見がバラバラで難航しました。すでに琉球瓦を生産しているのは奥原製陶ただ1軒だけであり、4代目主奥原崇典の尽力によって首里城の瓦が復元されました。なお、2014年に米国立公文書館から沖縄戦で焼失前の首里城のカラー映像が発見されており、それによると、本殿の屋根瓦は黒く映っています]が、経年で溜まった塵や煤の影響なのか、瓦自体が黒い色であるのかまでは不明です。一方、琉球大学付属図書館のウェブサイトで公開されている写真が戦前も黒い瓦だったとする根拠の一つとなっていますが、これはモノクロ写真に着色したものです。 また、瓦を研究している沖縄国際大学の上原靜教授（考古学）によると、琉球王国では16世紀後半から中国系の灰色（黒）の瓦が焼かれていましたが、17世紀末から赤瓦に移行し、灰色の瓦は燃料となるまき不足のため19世紀初めには生産されなくなったと推定しています。
　昭和大修理の際、見本の柱の古材に弁柄が残っていたという証言から柱は弁柄色に決められました。昭和大修理の際の内壁に弁柄が残っていたという記述から推定して外壁も弁柄色とされました。
　1992（平成4）年11月2日には正殿を中心とする建築物群、そこへ至る門の数々と城郭が再建され首里城公園が開園しました。現在は、首里城を中心とした一帯が首里城公園として整備・公開がすすめられており、正殿の裏側にあたる城郭や建築物群の再建事業も引き続き行われていました。約30年にわたる復元工事が2019（平成31）年1月に完了し、2月には国王が家族や女官と暮らした御内原（おうちばら）が公開されました。
　しかし再建開始から40年目の2019年（令和元）年10月31日未明に火災が発生、正殿と北殿、南殿が全焼しました。前述の1453年・1660年・1709年・1945年の焼失に次いで、歴史上5度目の焼失となってしまいました。

2015年4月撮影

Situated atop a gentle hill in Shuri, Naha City, Shurijo Castle was surrounded by curving castle walls, and within these walls were numerous structures. The castle was the central administrative body of the Shuri Royal Government of the Ryukyu Kingdom. It flourished as the center of politics, diplomacy, and culture in the Kingdom, and it was also the royal residence of the king and his family.
Shurijo Castle was destroyed by fire three times during the Ryukyu Kingdom period, and the fourth time in World War II. Each time, the Castle was restored. In 1992, the Seiden of the Shurijo Castle was reconstructed, modeled after the Seiden rebuilt in 1715. It remained standing until the collapse of the Ryukyu Kingdom. The building was constructed with a unique, Ryukyuan style, bringing together influences from both Japan and China. Brilliantly colored in vermilion, it was known as the only “red castle” in all of Japan and was unlike any other.
Construction work continued even after the opening of the Shurijo Castle Park in 1992, restoring numerous structures and areas within the Castle, including Kyo-no Uchi, Shoin/Sasunoma, Kugani Udun, and others. With the February 2019 opening of the private living area of the royalty, known as Ouchibara, visitors were able to appreciate the overall layout of the castle grounds after 27 years since the opening of the Park.