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資産になる家と消費して終わる家の大きな違いとは?

Автор: 兵庫・姫路の工務店モリシタ・アット・ホーム

Загружено: 2025-12-19

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みなさん、これからもし家を建てるとしたら、やっぱり資産価値の高い家を建てたいですよね。それは人情なので、今日は「資産になる家」と「ただの消費財で終わってしまう家」の違いって何なのかなということを、解説というか考察していきたいと思います。いつものように僕の板書を見ていただきながら、世間話も交えてお話ししていきますね。

今回この話をしようと思ったのは、ある友人からの質問がきっかけです。「森下さん、ショッキングなデータを見たんですけど、あれってなんでなんですかね?」と。何かというと、「中古住宅流通促進・活用に関する研究会」という、ちょっと長い名前の会があって、そこが各国の資料やシンクタンクのデータを集め、日本とアメリカを比較した「住宅に対する投資額」と、その投資によってストックされた住宅資産の累計比を示す比較が出ていたそうなんです。それを見て彼は「えー!」と思ったと。説明しますね。日本のデータは1969年くらいから始まって10年ほど前までのものですが、傾向は今も大きくは変わっていないと思います。家にかけたお金は当然年々積み上がるので、グーッと右肩上がりに累計されていく。一方で、その時点での住宅ストックを資産に換算すると、1980年くらいまでは投資額と似た感じだったのが、そこから乖離していって、累計投資に対しざっくり半分以下しか資産評価されていない。日本人的には「そんなもんちゃう?」となりがちなんですが、アメリカを見ると違います。こちらは1945年からの長いスパンですが、累計投資は同じく右肩上がりで、その評価ストックがほぼ同水準。特に2000年過ぎには、投資額をストック評価が上回る局面もある。つまり値上がりし続けた時期があるわけです。結局この差は何なんですかね、と。マクロな話に聞こえるかもしれませんが、個人にも切実なテーマなんですよね。

「なぜ日本だけ資産額が大きく下回るのか?」と問われると、一般的に5つほど理由が挙げられます。まず、日本の住宅寿命が極端に短い。欧米と比べると顕著です。統計上の滅失年数、つまり建てられてから壊されて無くなるまでの平均期間で見ると、日本は27〜32年くらい、だいたい30年前後で滅失します。アメリカは約66年、イギリスは80.6年と2.5倍以上。寿命がすごく長いわけです。次に中古住宅市場の規模の問題。日本は中古の評価が低く、特に木造住宅は「築20年で建築的資産価値ゼロ」という慣行が長く続いたため、中古で売っても値がつきにくかった。欧米では維持管理やリフォーム履歴が価値として正当に評価されます。例えば「屋根は何年に葺き替え」「外装は何年に塗装」「浴室は更新」「断熱改修済」「耐震補強済」といった履歴や性能が価格に反映される。だから「お金をかけた分だけ価値が上がる」「売る時に高くなるから、快適・安心のためにも手をかけておこう」というマインドが根づいている。手入れが行き届いた古い家ほど価値がある、新築のピカピカより、風雪に耐え大事に使われた家の方がいいやん、という感覚です。イギリスのコッツウォルズの石張りの家や天然スレートの屋根なんか、ほんまにカッコいいですしね。

3つ目は減価償却の扱い。日本の税制上の償却率が高く、家は年5.5%くらいで減価するとされ、理屈の上では12〜13年で資産価値がほぼ半減。だから大手ハウスメーカーさんの高額な家でも、数年売れないだけで「半額みたいな価格」に見えてしまう、という悲しい市場性がある。4つ目は政策の歴史的背景。戦後、日本は国土が焼け、居住建物が圧倒的に不足したため、「量の確保」が最優先。人口増の中で住宅用地の固定資産税の優遇などもありました。性能を上げて長持ちさせる付加価値よりも、建て替えを繰り返す方が業界としても回しやすかった側面がある。僕ら業者もその流れに与したところは反省点やと思います。そして5つ目が、今の人口減少。特に大都市圏以外の地方で人口が急減し、「需要が弱いのに空き家ストックが大量にある」という状況。需要がないのに供給が多いから、投げ売りでも売れるかわからない。市場原理で価格が上がりにくいというわけです。

ただ、ここを嘆くだけでは進みません。僕の感覚では、西暦2000年くらいを境に日本の住宅性能はだいぶ上がってきたと思います。リノベもやりがいが出てきて、昔の延べ石基礎みたいに根本から厳しい家ばかりではなくなり、「かけた分だけ価値がつく」土壌が育ってきた。これからは日本でも中古住宅市場が、古いストックの層と、比較的築年数の浅い層の二段構えみたいに整理されて、動きが変わってくるんじゃないかなと感じています。

では、今日のまとめ。「消費して終わる家」って何?という話です。これは「安普請の家」のことではない、と僕は思います。僕の友人たち――僕も地方都市で商売をしているので、事業者のご子息世代と接することが多いんですが――彼らの実家が空き家になっているという話をよく聞く。成功している家庭なので、どれも立派な家なんです。でも売れない。なぜか。でかすぎるんです。土地も広く、区画2〜3つ分にドーンと建ち、応接間も大仰。高度経済成長期、お父さんお母さんが頑張って建てた家で、そこには自己実現や体面の思想が入っている。昔は葬式や結婚式を家でやる前提もあって、「棺桶をどこから出すんや」なんて話も普通にあった。でも今はどうですか。ほとんど会館でやる時代ですよね。だから「豪華かどうか」ではなく、「自己顕示・自己実現のために作られた大きすぎる家」は、結局解体されて終わる。高額なお金をかけた家でも、消費して終わる家になってしまう。これは貧しい家の問題ではなく、お金持ちでも落ちる罠なんです。

じゃあ、新築で「資産になる家」を考えるなら何に気をつけるか。細かい仕様の話ではなく、方向性の概要です。まず1つ目、性能が高いこと。耐震等級3は当然として、地震国日本で60年、80年使う前提なら、その間に何度も地震は来る。耐震で壊れる家はナンセンスです。それから断熱・気密。豪邸にありがちな「明らかに寒い・明らかに暑い」は論外。鉄筋コンクリートで立派でも「体に悪いほど寒い」という話は現実にある。明確に暖かく、明確に涼しい家であること。さらに劣化対策。木造ならシロアリも大事ですが、本質は「雨漏りしにくい納まり(雨じまい)」と「結露対策」。防水材を盛るより、納まりで水を逃がす設計思想があるか。冬の内部結露、近年問題化する夏型結露への配慮があるか。ここまでが資産性の大前提やと思います。

2つ目、立地。身も蓋もないですが、やっぱり良い立地は値崩れしにくい。人口が増えていた時代は無理やり埋め立てや造成で住み場所を広げましたが、今は違う。人気エリア、駅や高速インターへのアクセス、買い物や病院、学校など生活施設が充実している場所。郊外についても、関東の衛星都市のようなニュアンスと、地方都市の郊外は意味合いが違います。これから人口が減れば、行政サービスの確保(ゴミ回収頻度など)も誰も保証できない。市街地の方が無難かな、というのが僕の方向感です。もちろん異論はあると思いますが、資産性という観点ではそういう見立てになります。

3つ目、コンパクトにする。小さな家にすること。大きくても25〜40坪くらい。売れにくいのは50〜60坪、70坪の家。100坪なんてほんまに売れない。しかもそういう家に限って寒い。間取りの可変もしにくい。骨組みは極力いじらず内部を更新する「スケルトン・インフィル」的な考え方ができる家だと、価値が保ちやすいです(これの詳しい話は別の動画で喋ってます)。今回は言い切ります。大きな家は消耗品になりやすい。お金があってプール付きの豪邸を建てるのは否定しませんが、日本の市場性だと消耗品になりがち。小さい家の方が資産と言いやすい。つまり転売しやすく、住み継がれやすい家です。資産価値が高い家とは、結果として人が住み継いでくれる家やと思うんです。逆説的ですが、そこが本質かなと。

4つ目、デザインはオーソドックスに。住宅屋として街を歩くと、「この家は何年くらいの家やな」「このメーカーのあの時期のシリーズやな」とだいたい分かる。時代でデザインは微妙に変わるんです。今の流行が普遍かどうか、オーソドックスかどうかを見るのは重要。特にフラット屋根系などは、その会社が一貫してメンテする前提なら良いですが、一般的に屋根の改修は一番大変でコストがかかる。特殊シートや特殊納まりだと競争原理が働かず高くつく。長期でリーズナブルに維持するなら、屋根はオーソドックスが安心です。

加えて、日本には「風流」「風雅」という言葉がありますよね。様式の美しさ、という意味で言えば、和の様式美は世界に誇れるものです。先日、東京の下町で小洒落た小さな和風の家を見ました。若い子たちが「おばあちゃんの家で、寒いけど大好きなんです」と言う。性能は今の基準から見れば足りないかもしれないけど、彼女たちを惹きつけているのは様式美なんですよね。イギリスの街もそうで、どこを切り取っても映えるのは、長い時間を超えた様式美があるから。手入れが行き届いた庭も同じで、木があると手はかかるけど、手入れできるデザインなら魅力になる。何もない省管理ではなく、「手がかかるけど手入れしやすい」庭。メンテがちゃんとされている家は、世界の潮流である「手入れされた古い家ほど価値がある」という評価軸に乗りやすい。人口が成熟し減少する国家としての日本は、丁寧さや清潔さに加え、ずっと大事にしてきた様式美が海外からも評価されている。じゃあ住宅の「完成された様式美」って何か、を意識していくと、それは資産と呼べる家に近づくんじゃないかなと。

マクロの話は「自分には関係ない」と思われがちですが、世界は世界、私たちは私たち。僕ら一人ひとりのたった一軒の家で日本の潮流を変えるのはおこがましいかもしれませんが、冷静に見れば、今お話しした要素を持つ家は、きっと住み継がれていく。せっかく日本はお金をかけてきたのだから、その分だけ住宅ストックが価値あるものとして積み上がる社会に、これから何十年かけて近づいていけたらいい。僕はその頃この世におらへんかもしれませんけど、子どもたちの代には実現してほしい。建築費も高くチャレンジは続きますが、そうやって経済を回していけたらいいなと。半分ジジイの願望ですけど、今日はそんな解説をさせていただきました。

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