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ひとりの人に依存してしまうのはなぜ? 母親・恋人としか仲良くできない理由について解説します(境界性人格障害、トラウマ、発達障害の人むけ)【精神科医・益田裕介/早稲田メンタルクリニック】

Автор: 精神科医がこころの病気を解説するCh

Загружено: 2020-11-24

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母親や恋人としか仲良くできない人について、どういうことか一緒に考えてみたいと思います。
今週、診察の中で母子密着の話題が出たり、小松さんとのラジオの中で嫉妬や憧れに関する話をしたりしたのですが、うまく話せなかったのでもう一度動画にしてみます。母親を憧れているが故に恐れていたことに気づかれた患者さんもいました。
基本的には精神分析のクライン派から取ってきてはいるのですが、正確なところは分析とは離れたところをしゃべっているので、その辺りはご了承ください。

<二者関係>
二者関係というのは2人の関係、カップルということです。カップルはよく母子関係に例えられます。そこでは「私」というのはお母さんとくっついる、一体化しているような空想を持っています。お母さんというものと一緒だからすごく万能感があったり、落ち着いて安心していたりします。

このような空想を抱きつつ、もう一方では当たり前ですが本当にくっついているわけではないので、空想、ファンタジーの上で憧れたり、真似したりします。憧れるから真似をするのです。そして、真似をするから成長につながるのです。これがカップル、母子関係の良さです。

憧れはモチベーションにもつながります。師匠に憧れる場合は、あの人みたいになりたいと思えば成長につながりますので、大人にもそういうことが起きています。よくメンターを持つことや目標にする人を持つことが大事だと言いますが、強烈な憧れ、原始的な本能を利用しなさい、そういうものがあるから人は成長しますよということです。

そのうち自分と憧れの人は本当の意味で別の人だと気づきます。だからいくら真似をしていても本当に真似をすることはできないし、真似しているだけではダメです。別人だから当たり前なのですが、手足の長さも違えば能力も違うし、長所欠点も違います。憧れの人物の方が自分より全ての能力が上回っているかもしれませんが、自分の中の使えるカードでやっていかなくてはいけません。時代も違ったりします。そういうことに気づいていくのですが、その気づきというのが恐ろしく、不安で人を苦しめます。くっついて安心している万能感を失うことになりますから、二者関係から三者関係に移るのは苦しいものです。

<三者関係>
二者関係の理解が進んだ後で三者関係に移るわけではありません。これが人間の面白いところなのですが、大人になってお母さんと私って別人なんだなと気づいてから三者関係が生まれるわけではありません。言葉を覚えたか覚えていないかの内に早速ライバル、父親が現れます。母親以外に父親みたいなものが参加することによって学びも増えます。母親がいなくなってしまえばご飯が食べられなくなってしまうところを、父親がいれば代わりがいます。また、父親は母親ではない遊び相手になってくれたりするので、いないよりはいたほうがいいとなります。

良い点としては、父親と母親は仲が良いので、父親は母親のものでもあり、母親は父親のものでもあります。ここら辺が強烈な苦しみを生みます。お母さんは私のものだ!と言うのですが、やはり奪い取ることはできません。それが挫折を生むのですが、あきらめることで自立に繋がります。挫折体験の後に自立が生まれます。父殺しをした上で自立をするとも言います。父殺しというのは本当に殺すわけではなく、逆にトンビが鷹を産むのように父親を屈服させてしまうこともあります。その場合は罪悪感というものを持って自立するなどあります。

悪い点としては、本人には耐えきれない厳しすぎる現実を突きつけられる、万能感を奪われて限界や挫折などの苦しみを産むということがあります。

三者関係の3人目がライバルや兄弟の場合になるとまた違ってきます。父親の場合はあきらめられても、兄弟の場合あきらめられない人は一生あきらめられません。「何でお兄ちゃんが」「何で妹が」というのはよくあります。同時代を生きるので余計にあきらめがつかないのです。空想上であきらめれば何とかなるものでもなく、兄弟だったらどちらが社長になるかなど現実的な利害関係も絡むので難しいです。

<二者関係と三者関係を繰り返す>
基本的には二者関係と三者関係の間を繰り返します。別の人間だと気づけば三者関係に移るし、三者関係は厳しすぎるので退行して二者関係に帰って行くという感じです。我々は別人で同じ人間ではないし、同じ目的で生きているわけではないし、時には戦い合う関係であると気づくと苦しいわけです。患者さんは「戦って勝てば良いのですね」というのですが、負けたから診察に来るわけですね。「私、勝ち続けています」みたいな人は精神科には来ません。診療に来たら、主治医は優しいということで二者関係に戻って、傷を癒して三者関係に戻ってということをします。

こういうことを考えるとカップルセラピーは成立するのか?ということも考えたりします。患者さんと恋人の会話を見させられていると、「何を見させられているのだ?」と思ったりもします。SNSもどういうことなんだろうと思います。患者さんがスマホで僕のSNSを見ているときは1対1の関係なんだろうか、そうではなくて三者関係なのかなど。コメント欄を見ると三者関係のような気もしますが、そうではなく1対1の関係だと思ってコメントをくれているのかもしれません。ここら辺は色々空想したりします。

どちらかというと診療やカウンセリングは二者関係のファンタジーを再現しているのかなと思います。薬を使う医療は、医師が母親で薬が父親だとすると「あんた、お父さんに頼りなさい」のように無理やり三者関係に持ち込むような感じです。福祉関係は他の利用者さんもいますし、三者関係かなと思います。診察の時は、この人は今どういうことを思っていて、どういうファンタジーを持っているのか、どういう言葉を与えるのが治療的な意味があるのだろうかを考えながら話を聞いています。

<議論>
以上は通常の発達、正常心理という話なのですが、例えばASD・発達障害の問題、人格障害の問題、PTSD・トラウマ・虐待、パワハラ・社会構造・システムなどが絡むので治療は難しくなります。

発達障害であれば、ASDの人の特徴に自他の区別がつきにくいということがあります。なのでそもそも二者関係から三者関係に移るところで生物学的な問題があるのではないかということもディスカッションの余地があると思います。

境界性人格障害の人は、二者関係の「失うことの恐れ、別人である」、三者関係の「厳しすぎる現実」「限界・挫折の受容」を不安に思いすぎるが故に、成長や自立などメリットの方に目が向かないということにはなりますが、それも生物的な問題があるのかないのか、脳の異常でそこは受容できるのかできないのかというのは議論の余地があるのではないかと思います。単純に正常心理の延長上に治療法があるのではないという感じです。

虐待を受けていた場合は、本来自分とくっついて安心させるはずだった存在が自分を傷つける人だった場合どうなってしまうのかということです。母親の代わりに父親の方に行くのか、父親は母親の代わりになり得るのか、痛いけれどもくっつきに行く倒錯のような行為になるのかなど議論になると思います。

パワハラの問題では、三者関係の構造から逃げられるのかということになります。また、相手のこともあります。母親が共依存的なものをやってしまっている、自覚なく病的なものを促進している、母親自身の不安障害だったりする場合は個別のケースを考えていかなければならないかなと思います。

以上のような流れと疾患とを組み合わせながら、何を伝えるのが良いのかを考えて喋るのですが、うまく伝わることもあればそうでない時もあります。診察の中で厳しすぎてしまって二者関係にとどまれなかったり、かといって母親代わりを演じているだけで治療的な意味があるのかとも思いますし、そんなに焦らずにとりあえず代理母として機能していれば良いのではなどいろいろな読み合い、バランスの取り方があります。

では結論です。どうして母親や恋人としか仲良くできない人がいるのかというと、母親を失うことや別人であることを認めたくないからということや、厳しすぎる現実や限界・挫折を受容しがたいから二者関係に退行しがちになりなる、後はそこに疾患などが関わるからということになります。

00:00 今日のテーマ
03:01 二者関係
06:07 三者関係
10:13 二者関係と三者関係を繰り返す
14:24 通常の発達ではなかった場合
19:29 答え合わせ

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#精神分析 #母子密着 #三者関係

ひとりの人に依存してしまうのはなぜ? 母親・恋人としか仲良くできない理由について解説します(境界性人格障害、トラウマ、発達障害の人むけ)【精神科医・益田裕介/早稲田メンタルクリニック】

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