【精神科医解説】うつ病での「3大やめとけ」｜うつ病治療は大事

「うつ病でやめるべき3つ」を精神科医が徹底解説。
#精神科 #やめとけ #うつ病

0:05 （１）はじめに
0:25 （２）うつ病はしんどいがよくなる病気
2:24 （３）うつ病でやめとくべき3つ
2:32 ①放置する
4:54 ②治療中断する
8:59 ③考えすぎる
11:50（４）まとめ

うつ病は時間はかかっても治療で改善を見込みます。だからこそ治療をしない状態や治療の中断には特に注意が必要です。

「うつ病でやめるべき3つ」について、精神科医が13分で回答しています。
出演：春日雄一郎（精神科医、医療法人社団Heart　Station理事長）

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↓詳しい内容はこちらです。

（１）はじめに

うつ病は時間がかかっても徐々に改善を見込める精神疾患です。一方で、治療の中断などから慢性化してしまう場合もあります。今回は、うつ病の治療において避けるべき主な行動について、具体的に解説していきます。

（２）うつ病はしんどいがよくなる病気

うつ病とは何か

うつ病は気の持ち方の問題ではなく、脳内のセロトニンの減少など、れっきとした脳の病気です。意志の弱さや性格の問題ではなく、日本では16人に1人がなるとも言われ、誰でもかかる可能性がある精神疾患です。適切な治療を受ければ、時間はかかりますが回復が期待できます。

うつ病の主な症状

うつ病の症状は大きく3つに分けられます。まず「こころの症状」として、落ち込みや罪悪感が続き、物事に意欲や興味を持てなくなります。次に「からだの症状」として、食欲の低下や不眠、吐き気、めまいなど様々な自律神経症状が現れます。そして「行動の変化」として、言葉が減り、人を避けたり、イライラするなど、外から見て分かる変化が生じます。

うつ病の主な治療法と回復過程

治療の基本は3つです。第一に「休養」、特に頭をしっかり休ませることで徐々に改善を図ります。第二に「薬物療法」として、主に抗うつ薬で脳内の神経伝達物質のバランスを整えます。第三に「精神療法」として、ストレスへの対処法や考え方の癖の見直しなどで対処力を改善します。

回復は3段階で進みます。「急性期」は症状が一番強い時期で、休養を最優先しながら薬で治療します。「回復期」では徐々に活動を増やしますが、実際は波があり、意欲の問題もあって時間がかかりやすい時期です。「再発予防期」は症状が改善した後も治療を継続していく大事な時期となります。

うつ病は適切な治療を受ければ、時間がかかっても良くなることを見込めます。長期治療が必要ですが、最終的には薬なしの治癒を目指すことができ、自分の考え方や在り方を見直すきっかけにもなり得ます。

（３）うつ病でやめとくべき3つ

①放置する

なぜ放置は危険なのか

うつ病は脳の不調ですので、放置すると基本的には悪化し、影響が強くなってきます。特に長期間経過すると、治療しても治りにくい状態になったり、予後に影響することがあります。治療法自体は確立されていますので、早期受診が回復への近道となります。

放置した場合、3つの深刻な影響が生じます。第一に症状が悪化し、仕事や日常生活が困難になり、時に混乱も発生します。第二に症状が慢性化し、治療をしても症状が残ったり、再発しやすくなる恐れが出てきます。第三に仕事や学業、人間関係への影響がより深刻になってしまいます。

放置に至る理由と対策

なぜ放置してしまうのでしょうか。まず、意欲の低下や悲観的な思考という症状そのものが治療を妨げます。また、「自分が弱い」「怠けているだけ」という過剰な罪悪感から、治療に踏み出しにくくなります。さらに、「うつ病だと知られたらどうしよう」という偏見への恐れも受診を遅らせる要因となります。

放置しないためには、早期受診が大前提です。早く治療を始めるほど回復が早く、治療期間も短くなります。偏見の可能性も織り込んだ上で、自分は自分として必要な治療を受けることが大事です。今は辛くても、治療で良くなるというイメージを明確に持つことが、治療へのモチベーションにつながります。

②治療中断する

治療継続の重要性

症状が良くなっても治療継続が大事で、徐々に改善が続いていきます。自己判断で薬や通院を中断すると悪化し、再発のリスクが高まります。しかし、治療や病気への葛藤が続き、それが中断につながるリスクがあるのも事実です。

治療を中断した場合の影響は深刻です。論文によっては5割以上が1年以内に再発するとも言われ、再発時にはより症状が悪化している場合もあります。再発を繰り返すことで慢性化する恐れもあり、「またダメだった」と自信を失い、回復への希望も失ってしまうことがあります。

中断しやすい時期と対策

中断に注意すべき時期は3つあります。「治療初期」は効果が出る前に副作用を感じて「合わない」と判断しやすい時期です。「回復期の停滞期」は症状改善による油断や、回復ペースの低下による焦りが生じます。「社会復帰後」は「もう治った」という思い込みが出やすくなります。

それぞれの時期で中断の背景は異なります。治療初期は病気の否認や副作用のつらさが主な要因です。回復期は良くなったことによる油断や、以前は気にならなかった副作用が目立つようになることが背景にあります。社会復帰後は、元に戻ったという思いや、患者の立場から脱却したいという気持ちが中断につながります。

治療を中断しないためには、再発予防という治療のゴールを理解し、うつ病になったことや回復に時間がかかることを受け入れることが大事です。自分がうつ病後どう生きていきたいか、目指す方向性を明確にし、そのための治療の必要性を認識することが重要です。

薬なしの生活も最終的には可能な場合があります。薬で安定（寛解）した後、半年以上は維持療法として薬を続け、その後医師と相談しながら数か月かけて慎重に減量していきます。焦らず進めることで、最終的に薬なしの安定した生活（治癒）が可能となることもあります。

③考えすぎる

考えすぎがもたらす悪影響

考えすぎる反すう思考は、脳を疲れさせて休養を妨げます。これは前向きな反省とは異なり、建設的ではなく、ストレスに繰り返し触れることで気分を悪化させます。うつ病の症状として現れる場合と、もともとの思考の癖として出る場合があります。

主な考えすぎのパターンには、過去の出来事を何度も繰り返し考えて自分を責める「反芻思考」、根拠なく未来を不安視する「先読み思考」、些細なことから最悪の結末を想像する「破局的思考」があります。

考えすぎによる影響は深刻です。否定的思考が止まらず頭が回り続けることで、回復に必要な休養ができなくなります。自分で自分を批判し続けることで常にストレスが続き、欠点や失敗ばかりに焦点が当たって自己肯定感が下がります。

考えすぎへの対処法

うつ病における具体的な影響として、反すう思考によるストレスが症状を悪化・長引かせ、否定的思考が薬の効果も打ち消してしまい、治療効果が得られにくくなります。最悪の場合、絶望的な考えに支配されて危険な行動につながる可能性もあります。

考えすぎの背景には、うつ病による脳機能の変化でネガティブな情報に注意が向きやすくなること、完璧主義や真面目さがうつ病で増幅されること、周りからどう思われるかを気にしすぎることなどがあります。

対策としては、考えすぎそうになったら散歩や音楽鑑賞など、五感を使う活動に集中することが有効です。考えが出てきても「これは取り上げなくていい」と自分を許し、無理に消そうとするより受け流すことが大事です。また、「自分は自分、人は人」と捉え直すことで、他者評価への過敏さを減らしていくことも重要です。

（４）まとめ

うつ病は確かに様々なしんどさがありますが、治療法も確立されている病気です。時間はかかりますが、改善は確実に見込める精神疾患です。

今回見てきた「うつ病でやめるべき3つ」は、「放置する」「治療を中断する」「考えすぎる」でした。治療においては葛藤が生まれることもありますが、うつ病の経験から必ず得られるものもあります。この認識を持つことが、回復への第一歩となります。

うつ病は誰もがかかりうる病気であり、適切な治療を受ければ改善が期待できます。焦らず、自分のペースで治療に取り組むことが大切です。困難な時期もありますが、必ず光は見えてきます。一人で抱え込まず、専門家の助けを借りながら、着実に回復への道を歩んでいきましょう。

こころ診療所グループ（医療法人社団Heart　Station）
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#うつ病治療 　#精神科医　

【監修者】
医療法人社団Heart　Station　理事長　府中こころ診療所院長　春日雄一郎
精神科医（精神保健指定医、日本精神神経学会精神科専門医）
2005年東京大学医学部卒業、NCNP病院、永寿会恩方病院等を経て、2014年に府中こころ診療所を開設、その後医療法人化し理事長に就任、2021年8月に分院「こころ診療所吉祥寺駅前」を開業。メンタルクリニックの現場で、心療内科・精神科の臨床に取り組み続けている。